かつて将棋雑誌の編集者であり、生前の村山と面識のあった著者によって、彼にまつわる様々なエピソードが綴られていく。難病というハンデを負っての挑戦、「名人になる」という目標に向かってまっすぐ進む執念、奇妙でいてそれでいて深い師弟愛、そして惜しまれる夭逝。
こう書けば書くほど陳腐なものに思われるかもしれないが、とにかく読めば村山聖という男が凄かったということだけは感じてもらえるはずだ。
最後、臨終の間際に意識が朦朧となった村山は棋譜を呟き、「二七銀」と言って息を引き取る。誰と対局していたのか、また最後の一手「二七銀」は勝利の一手だったのか。本書を読まれた方は皆、気になるところだろう。
講談社文庫