ちっぽけな幸せを得るために生きる、性根の腐りきった悪党たちの物語。彼らにとって何よりも大切なのは自分であって、その他は路傍の石と同じ。権力を持つ者、力のある者に従うことはあっても忠義の心はない。裏切りは日常茶飯事。悪意に満ち溢れ、善意は欠片もない。
そんなわけで、はじめて馳星周の作品を読んだとき、さすがに気分が悪くなった。一人として感情移入のできる登場人物がいないし、読後感はどうしようもなく悪い。
ただ、本書は「不夜城」や「ダーク・ムーン」ほど救いのない、ダークな物語ではない。馳ワールドに免疫ができただけかもしれないが、メロドラマ的な要素が増えているような気がする。免疫もなく前述の二冊をいきなり読むのは、精神衛生上よろしくないので、人情味あふれる話や甘い恋愛小説に飽きた人、人の中にある闇を覗いて見たくなった人にオススメしたい。
角川書店