本書はそれらトヨタ生産方式の生みの親であるトヨタ元副社長、大野耐一の生き様を通して、トヨタの「ものづくり精神」に迫った伝記小説である。とは言っても張富士夫トヨタ自動車副会長のインタビューも多数掲載してあり、ビジネス書やドキュメンタリーともとれる不思議は読み物に仕上がっている。読めば、彼の明確な目的意識を持ち妥協を許さない強い信念と強烈な実行力が「トヨタ生産方式」という普遍的システムを作り上げたことがわかるだろう。
同時に思うのが、おそらく大野のような人物を古臭いと感じて敬遠する人も多いだろうなということ。無骨で仕事に厳しく、すぐ怒鳴る。間違いなく最近の若者には受け入れられないタイプ。私も上司だったら少し嫌だ。しかし、最近受け入れられないタイプだからこそ、今、こういう人物が必要なのではとも思えてくる。
日本経済新聞社