今回は前2作と違い、収録されている3作品にはモデルがいるのが特徴。
新聞社会長・プロ野球球団元オーナーの“ナベマン”。IT企業元社長の超合理主義者な“アンポンマン”。元宝塚女優の“白木カオル”。
彼らは読んだ瞬間にモデルがわかってしまい、「俺の好きな伊良部シリーズの最新作はひょっとしてヤバイ出来?」と不安になったが、読み進めてホッと一安心。伊良部は相変わらず唯我独尊・傍若無人ぶりが発揮されており、ニヤリとしてしまう。特に表題作で唯一特定のモデルのいない「町長選挙」は秀逸。報復人事を前提とした骨肉の町長選挙戦が繰り広げられる離島の島民たちの心の動きが鮮明で、伊良部によって導き出された解決法には読後感が何だか爽やか。
なお本書は伊良部氏のパートナーである看護婦のマユミのキャラが立ってきたのが印象深い。このコンビの次回作が更に楽しみだ。
皆さんも1作目「インザプール」から本作まで是非ご一読を。
文藝春秋