本書をマレーシア関連の本だと思って読み始めたが、意外にもシンガポールとも深い関係があった。不覚。
私の世代は「怪傑ハリマオ」なんてTV番組は知らない。ハリマオという言葉は聞いたことがあるが、それが何を意味するかなんて考えたこともなかった。
ハリマオこと谷豊が何故にハリマオと呼ばれるようになったか、31年という短い生涯をどのように送ったか、著者は懸命に調べたが、多くのことは結局分からずじまい。戦後何十年も経っており、証言できる者が減少し続けているのだからやむを得ない。それでも読むのを途中で止めることができなかったのは、知っている地名が数多く出てきたからだろうか。
彼は日本軍に協力し、軍の南下と共にマレーシアからシンガポールを目指す。道中でマラリアに倒れ、シンガポールで永眠についた。
賑やかなブギス・ジャンクションからヴィクトリア・ストリートに沿ってサルタンモスクを右に見ながら北東に進むと、左手にMuslim Cemeteryがある。ここだろうか、彼が眠っているのは。
文藝春秋