時代は高度経済成長期、舞台はフィリピン、中堅商社のマニラ支店長小寺、現地スタッフの日系フィリピン人フランクを中心に、ミンダナオ島のラワン材を巡って奔走する日々を描いた経済小説です。
しかし、読み進めていく内に単なる経済小説を読んでいるというよりは、人間とは何か、海外で仕事をするというのは何か、と様々な事を真摯に考えさせられる作品です。小寺支店長が部下の鶴井に問いかけた言葉。「海外で我々が働いているのは何の為だと思う?それは、会社の為でもある、日本の為でもある、しかし、一番大切な事はその国の為に何か役に立つことをしようと考えないといけないのじゃないのかね。」
理想論かもしれません、しかし、異邦人として他所の国に住まわせて貰っているという謙虚さを常に忘れてはいけないのではないでしょうか。ちょっと量はありますが、読み応え充分、是非ご一読を。
文春文庫