2007年4月2日
『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦
どうしても読む本の分野や作家に偏りが出てしまうので、時々気紛れに知らない作家の本を適当に買うようにしている。そんな風に適当に選んだのが本書。
買った後にオビで「恋愛小説」と紹介されているのを見つけて、ちょっと後悔。恋愛小説とはどうも相性が悪い。好きではないと言った方が正確か。
期待せずに読み始めたが、最初こそ漫画のような語り口や展開に戸惑い遅々としてページが進まなかったものの、慣れると予想に反して面白く、数時間で読み終えてしまった。
現実には存在しえない登場人物たちが出てくるので、恋愛小説というよりもファンタジーに近かったのが幸いしたのかもしれない。この辺は好みの分かれるところだが、私のように、フィクションとはありえそうな嘘とありえそうにない嘘の二つでしかないと思っている人間には問題ない。一方で、現実にありえない世界を気にする人には不向き。
同性故だろうか、外堀を埋め続けて本丸に向かっていかない片思いの大学生の青年に感情移入してしまい、読みながら応援してしまった。
他方、彼が恋焦がれる相手は、「職業は天狗」を自称する樋口君やパンツ総番長の印象が強過ぎて、私の中では彼女のイメージを固めることができなかったのが残念。
角川書店
協力=シンガポール紀伊國屋書店
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.095(2007年04月02日発行)」に掲載されたものです。
文=茂見