正確には20冊ほどはあった、南京錠のかかった古い戸棚の中に。ダニエル・スティールの恋愛小説、ウンベルト・エーコの分厚い小説(イタリア語)、ロンリープラネットのガイドブック(モンゴル版)…。しかし、この学校にとって本は貴重な「宝物」、だから子どもたちが傷めてしまわないように、カギをかけていたのだ。
子どもたちに本を読む習慣を教えたい。でも、教えるための本がない。勉強したいと思っても、近くに学校がない。あっても学校には本がない。お金がない。生まれた場所によって本すら読むことが出来ない―そんな状況を変えたいと、著者はマイクロソフト社を辞め、キャリアも高収入も恋人も捨て、慈善団体を立ち上げ奮闘する。
私たちにとって当たり前であること。本を読むことができる、勉強することができるということは、ある人たちにとっては、幸せなことであり誇りでもある。そんな「幸せ」の橋渡しをする著者の活動によって希望を得た人々の姿が、目に浮かぶ。
ランダムハウス講談社