同一の場所と時間で、微妙に交錯しながら二つの物語が進行している。
両作品ともTheピーズという日本のロック・バンドの実験4号という曲に捧げられているらしいが、そんなバンドは知らなかった。故にそんな曲があるとも知らなかったので、あの不条理な戯曲、ベケットの「ゴドーを待ちながら」への二人のオマージュだと思っていた。伊坂の作品名は明らかにそれとわかるが、どちらの作品も明確な起承転結がないので、どこか念頭に置いていたことは間違いないのだろう。
幸いなことに、「ゴドー」と違って、どちらの作品にも救いがある。作品中の言葉を借りれば、「末期的な夕焼けみたいな。さあ頑張るぞという感じじゃなくて、悲しい歌なのに明るいような」感じがある。
最も注目を集める作家と映画監督が紡ぎ出す、不思議と温かい荒唐無稽な二つの物語。
講談社