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2009年4月20日

『納棺夫日記』青木新門

photo-10映画「おくりびと」の主演、本木雅弘が感銘を受け映画を作るきっかけとなった一冊が「納棺夫日記」。青木新門が、棺に遺体を納める納棺の仕事をするようになり、日々死を見つめながら真摯に生を、そして死を考えていく。そして著者は「光」について考えるようになる。普段は見ることの出来ない「光」が死に間近に接した瞬間見えてくることがあるという。

「多くの死者達の顔に光の残映が微光として漂っていた……」「人は死を受け入れるとあらゆるものが光ってみえるようになるのだろうか……」

そんな自問を繰り返す著者の言葉を読みながら、私も妙に首肯する感があった。私自身その「光」を見たことは無いが、宮本輝の「幻の光」という本の事を思い出していた。夫を突然の自殺という納得のいかない死で亡くした女性が、死後再婚をし、日々のささやかな幸せを大切にし生きながらもある時どうしようもなく「何故、前夫は突然亡くなってしまったのか」と考えてしまう。そんな女性に、再婚した夫が「ある時よく分らない光に誘われるように逝ってしまう。そんな事ってあるんじゃないのかな」と優しく言うのである。

宮本輝の言う「光」と本書の「光」は少し意味合いが違う。ただ、死と光に何か意味があるのではないか、そんな事を本書を読みながら考えた。

 

文春文庫

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.143(2009年04月20日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 里見

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