シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『世界の歴史13・東南アジアの伝統と発展』石澤良昭/生田滋

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2010年1月1日

『世界の歴史13・東南アジアの伝統と発展』石澤良昭/生田滋

photo-15歴史を知ることは興味深い。何かの役に立つ、あるいは立てる為ということではなく、純粋に歴史を知ることは興味深いものだ。全30巻で現在刊行中の中央公論新社の文庫版「世界の歴史」シリーズはそんな世界の歴史を知る上での概説書として、手頃な価格でうってつけの本である。

今回ご紹介するシリーズ13巻目は東南アジアの伝統と発展。

東南アジア史の曙である先史時代、地球の寒冷化の時代(氷河期)、東南アジア郡島部、南シナ海、ジャワ海の大部分の海面は今よりも150mも低く、スンダランドと呼ばれる巨大な陸地となっていた。しかし、気候的には今ほどではないが、熱帯に位置し、かなり温暖であったらしい。きっと豊かな自然が広がっていたのだろう。そして、ピテンカトロプスという原人も発見される等、アフリカと同じく人類の進化の重要な舞台であった。

その後、インドに紀元前6世紀頃から都市国家が形成され、また仏教が広まった。東南アジアにおいても仏教をはじめ、インドの影響を受けていき、中国とインドの国際貿易の中継地としてマレー半島を中心とした東南アジアのインド化が5世紀頃には見られるようになっていく……。

中国の影響、クメール帝国の繁栄、イスラーム国家の形成、大航海時代の到来……東南アジアはその後も東西貿易の中継地として――いわゆる海のシルクロードなどと呼ばれるが――多様な文化を花開かせていくことになる。

太古から変わらずにある豊かな自然、それを背景とした東南アジアの多様な文化は今でも感じることが出来る。その歴史を知ることで更にこの地域に興味を持つ事が出来るかもしれない。

年始めに歴史に想いを馳せてみてはいかが。

 

中央公論新社/ISBN:9784122052215

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.159(2010年01月01日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊国屋書店 里見 幸一郎

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