故郷大阪で両親を失い、江戸で上方料理を出す「つる家」を任されることになる主人公の澪。失敗や妨害など様々な苦難を乗り越える澪の強さ、その成長していく過程がなんとも美味しそうな料理とともに語られている連作時代小説。
物語のところどころに散りばめられている人間の機微に心が揺さぶられること数回。弱さも強さもあわせもつ澪の芯の通った姿に感心すること数回。これから何回この小説を読み返すことになるのだろう。
全作通して、料理とは違ってゆっくり読んでも冷めることもないはずなのに、ついついページをめくってしまう不思議な魅力を持っている。美味しさの詰まった本当にウマイ(巧い・上手い・旨い・美味い)小説。未読の方またこれからも続く物語を是非一読を、また時代小説が苦手という方にも手に取ってほしい一冊。さらに巻末には作品中に登場した料理のレシピ付。
ハルキ文庫/ISBN:9784758435840