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『遠い太鼓』村上春樹

photo-5 この文章が読まれる頃には、ノーベル文学賞の発表も終わっているはず。果たして、村上春樹氏は受賞出来たのでしょうか。『1Q84』が世界的にヒットしたのが昨年末。幾度となく肩透かしをくった身としては、早く結果が知りたいところです。

 今回紹介するのは、氏が1986年秋から1989年秋にかけての3年間を、主にイタリア、ギリシャで過ごした旅行(生活)記。この間に『ノルウェイの森』と『ダンス・ダンス・ダンス』が書かれました。と言っても、小説をものするときの懊悩、なんて堅苦しいテーマはなくて、軽妙な語り口で外国生活での喜怒哀楽が描かれています。鷹揚なギリシャ人とのエピソードは、世界をにぎわしているかの国の経済がどう成り立っていったかがわかるような気になります。

 私たちも外国で暮らしていますが、住んでいると始めは珍しかったこともすぐに日常になってしまいます。少し気分を変えたいとき、このエッセイがお勧めです。

 

講談社/ISBN:9784061853829