シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『 桐島、部活やめるってよ』朝井リョウ

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2012年11月19日

『 桐島、部活やめるってよ』朝井リョウ

photo-3 過日、日本への深夜便で寝るに寝られず、仕方なく見始めた「桐島、部活やめるってよ」という映画が目が覚めるような傑作だった。なつかしいような、思い出して身につまされるような、高校生活の閉塞感や微妙な空気が鮮明に映し出されていた。

 その原作で、著者が大学在学中に書かれたのが本書。バレー部のキャプテンで校内の人気者の桐島が、チームメイトにも、親友にも、彼女にも告げずに突然部活をやめる。桐島の不在が引き起こす、これまでと勝手が違う生活に、田舎の県立高校に通う5人が揺り動かされる。野球部、バレー部、ブラスバンド部、女子ソフトボール部、映画部。部活をキーワードに、至るところでつながる彼らの物語。

 映画から入ってしまったため、小説を読み始めたときには構成とキャラクターの違いに違和感があったが、描写の素晴らしさですぐに物語に入っていくことができた。等身大という言葉がこれほどはまる小説も、なかなかないように思う。これぞまさに青春群像劇、おすすめです。

 

集英社/ISBN:9784087468175

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.224(2012年11月19日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 河合

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