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2025年6月11日

シンガポール金融管理局、暗号資産企業に国外業務停止を命令


 
シンガポール金融管理局(MAS)は6月3日、国内に拠点を置きながら国外で暗号資産サービスを提供している企業に対し、6月30日までにその業務を停止するよう命じた。対象は、デジタルトークンサービスプロバイダー(DTSP)と呼ばれる事業者で、違反した場合には最大25万シンガポールドル(約20万米ドル)の罰金、または最長3年の懲役刑が科される可能性がある。
 
この命令は、これまでシンガポールに法人登記を行いながら、国外で規制回避的に活動する企業が問題視されていたことを背景に発令。そして、2022年に制定された金融サービス・市場法(FSM法)に基づき、暗号資産関連業務の透明性と国際的な信頼性を高めることを目的として、今回の措置に至っている。
 
最近ではビットコインをはじめとする主要暗号資産が価格を上昇させており、市場全体に強気相場への期待感が高まっている。そして、専門家による分析を元にした仮想通貨 おすすめを参考にし、投資家たちは暗号資産の購入を進めている。こうしたタイミングでの規制強化は、投資資金の流入が活発になる中で、シンガポールが国際的な金融ハブとして信頼性とリスク管理体制の強化を図る動きと見ることもできるだろう。
 
MASは国外活動を展開するDTSPに対して、一切の移行措置を設けないと明言。したがって、DTSPは新たにライセンスを取得するか、あるいは業務を完全に停止する以外に選択肢はないと言える。
 
MASが特に警戒しているのは、マネーロンダリング(AML)およびテロ資金供与対策(CFT)に関するリスクだ。そのため、MASがライセンスを発行するのは、極めて限定的なケースにとどまると予想されている。
 
また、シンガポール法人を維持しながら海外業務を行うというモデル自体が、今後は大きな法的リスクを伴うことになりそうだ。
 
なお、MASによる規制強化は突然と始まったものではなく、2022年以降は継続して監督体制の厳格化を進めている。これは、グローバルなクロスボーダー資金移動に伴うリスクへの対応であり、国際社会における規制協調の一環でもある。
 
実際、MASはすでに決済サービス法や証券先物法など、既存の金融法の下で登録または免除されている企業については、例外的に活動を継続可能としているが、それ以外のDTSPには厳しい姿勢を崩していない。
 
今後、シンガポールに本社を置くWeb3企業や取引所は、ライセンス取得のハードルが一段と高くなることを認識する必要がある。また、拠点の再編や事業モデルの見直しを迫られる企業も少なくないだろう。
 
東南アジア市場での影響も大きく、たとえばドバイなど規制に柔軟な拠点へのシフトが進む可能性もある。グローバルで事業を展開する暗号資産関連企業にとっては、単に一国の規制ではなく、国際的なコンプライアンス戦略の再構築が求められている。
 
今回の措置は、シンガポールが金融の信頼性と国際的なガバナンス強化の間でバランスを取る姿勢をより明確に打ち出したものであり、アジア全体の暗号資産規制の動向にも影響を与える可能性がある。

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