著者は文藝春秋勤務後、小説家デビューし、『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞も受賞し、現在に至るまで数多くの読者に支持されている。
本書は、妻のなずなに裏切られ、失意のうちにいた明生。「愛するべき真の相手は、どこにいるのだろう?」。半ば自暴自棄の彼はふと、ある女性と出会い、惹かれていく。男女間の恋愛を徹底して突き詰めた、愛の本質に挑む純粋な恋愛小説である。
また、今回の文庫版に付いている解説がひそかにおすすめ。新潮社の担当編集が著者との思い出を19ページにわたって語っており、青臭くて熱くて、でも真実味のあるいい解説となっている。この解説を含めて手に取っていただきたい作品。
祥伝社/ISBN:4396633289