シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『ほかならぬ人へ』白石一文

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2013年3月4日

『ほかならぬ人へ』白石一文

photo-3 先日、史上最年長の75歳で第148回芥川賞を受賞し話題になった黒田夏子さんの『abさんご』が記憶に新しい。今回ご紹介するのは第142回直木賞受賞した白石一文氏の『ほかならぬ人へ』。白石氏が受賞した時、父は直木賞作家の白石一郎ということで、初の親子二代受賞として話題となった。

 著者は文藝春秋勤務後、小説家デビューし、『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞も受賞し、現在に至るまで数多くの読者に支持されている。

 本書は、妻のなずなに裏切られ、失意のうちにいた明生。「愛するべき真の相手は、どこにいるのだろう?」。半ば自暴自棄の彼はふと、ある女性と出会い、惹かれていく。男女間の恋愛を徹底して突き詰めた、愛の本質に挑む純粋な恋愛小説である。

 また、今回の文庫版に付いている解説がひそかにおすすめ。新潮社の担当編集が著者との思い出を19ページにわたって語っており、青臭くて熱くて、でも真実味のあるいい解説となっている。この解説を含めて手に取っていただきたい作品。

祥伝社/ISBN:4396633289

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.229(2013年03月04日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 村山

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