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『女のいない男たち』村上春樹

photo実に作者の9年ぶりとなる短編「女のいない男たち」が刊行されました。

 予告で題を見たときは、これまでになく直接的だな、という感想だったのですが、実際に読んでみるとこれがまた、一言で言うと、せつねぇ。

 あると信じていたものが、いつか失われる、それが予感であったり、願望であったり、実感していたと信じていても、見えていない部分は必ずある。男女間の機微はその関係それぞれにあるのでしょうが、残される男はさみしい。

 とは言え、そのようなテーマもありつつ、くすりと笑える部分もいたるところにあり、男女問わず充実した読後感はあると思います。

 世界中で話題になる作品を、原書で翻訳に先駆けて読んで得する感じ、日本人だとなかなか味わえませんが、そこは村上春樹作品です。今読んでおけば、(文学好きな)ローカルのお友達に胸をはれること間違いありません。

 

文藝春秋/ISBN:9784163900742