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『タックスヘイヴン』橘玲

photo-7 今を切り取るわかりやすい経済の解説で人気の、橘玲による国際金融サスペンス。そして主な舞台はシンガポール、というわけで読むしかないと手に取った今作。息つく暇も無く、一晩で読み終えてしまいました。

 真骨頂の現代社会を切り取る記述は、言うまでも無く冴えわたり、出てくる国はシンガポール・タイ・マレーシア・ミャンマー・日本・ブラジル・北朝鮮。普通の人からマフィア、政治家までも入り乱れ、お金と命のやり取りが繰り広げられます。主人公は青春時代を共にした男女3人。しかし、道はそれぞれに分かれ、一人は租税回避の指南役かつ公にできない金融トラブルの解決人。一人はしがない翻訳家。そして、最後はこの3人の再会のきっかけとなる、シンガポールで変死をとげた金融マンの妻。せつなくもくすぶり続ける感情が殺伐としたお金にまつわる物語を彩り、読みやすくしています。

 そしてなによりも、頻繁に出てくる馴染み深いシンガポールの風物が読書を楽しくするはずです。読み終わったら、友達とあれってこれのことだよね、と答え合わせしてみるのも楽しそうです。

幻冬舎/ISBN:9784344025639