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健康相談Q&A

2020年7月15日

消化性潰瘍とは?原因と症状、治療法について

 胃潰瘍、十二指腸潰瘍といった消化性潰瘍は日常よくみられるありふれた疾患ですが、半世紀ほど前までは人類のどれだけ多くの人がこれらにより命を落としてきたことでしょうか。かの有名な諸葛亮孔明や夏目漱石も消化性潰瘍により亡くなったと言われています。
 
 そもそも潰瘍とは「皮膚・粘膜などの表層が限局的にただれて崩れ落ち、組織の欠損を生じた状態」を言います。その潰瘍が消化管、特に胃・十二指腸に出来たものを(狭義の)消化性潰瘍と言います。一般に胃潰瘍は、中年以降に多く、また、十二指腸潰瘍は、青年・壮年に多い傾向があります。男女差では、男性に多いのが特徴です。
 

症状

 症状としては、上腹部痛、吐き気、嘔吐、胸焼けなどが一般的ですが、十二指腸潰瘍の場合、空腹時に上腹部痛がみられることが多く、背部痛をしばしば伴います。また、病状が進行すると吐血したり、穿孔により激痛を伴うことがあります。人によっては、黒く粘っこいコールタールのようなタール便と呼ばれる便の排泄によって初めて消化性潰瘍の存在に気が付くといったこともあります。あるいは、意識消失や突然の冷や汗を伴う気分不良が、実は出血性消化性潰瘍によるショック症状であるということも珍しくありません。
 

消化性潰瘍の原因

 原因としては、ヘリコバクタピロリ菌 Helicobacter pylori(以下ピロリ菌)感染や非ステロイド性抗炎症剤 nonsteroidal anti-inflammatory drug(以下NSAID)の投与があります。ピロリ菌は水を介して経口感染し、長期間胃粘膜に定着し粘膜に障害を起こすことにより潰瘍や癌が発生しやすくなると考えられています。日本でのこの菌の検出率は、胃潰瘍で約80%、十二指腸潰瘍で約90%と言われており、特に十二指腸潰瘍で高率に検出されます。またNSAIDは、痛みや熱の原因であるプロスタグランディンの産生を抑制しますが、胃粘膜保護や腎血流維持といったプロスタグランディンの身体に良い作用も同時に抑制するため、消化性潰瘍の原因となります。それらにストレスが加わると、さらに潰瘍が発生しやすくなります。
 

診断方法

 消化性潰瘍の診断には、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)、胃透視(透視下にバリウムを飲んで、調べる検査)があります。症状がある場合は、できれば内視鏡検査をまず第一にお勧めします。というのも、内視鏡検査ではピロリ菌の感染の有無や潰瘍が良性か悪性かを調べるために組織採取ができ、出血している場合などは直ちに止血処置を行なえるといった点で、胃透視より利点があるからです。
 

治療法

 消化性潰瘍の治療は、保存的療法と手術療法があります。穿孔例や出血性潰瘍の内視鏡での止血困難例および潰瘍による変形狭窄例などは手術の対象となることがありますが、現在は内服薬による治療が主流です。ピロリ菌が原因である場合は、まずピロリ菌の除去を行います。一般的には、アモキキシリン、クラリスロマイシンという2種類の抗生物質と酸分泌抑制剤のプロトンポンプ阻害剤の通常の2倍量を日本では1週間(日本では保険適用が1週間です)、シンガポールでは1週間~10日間内服します。普通、この除菌療法によって約80%以上ケースでピロリ菌は死滅します。
 
 NSAIDが原因である場合は、NSAID投与の中止が原則ですが、実際問題として、変形性関節症や慢性関節リウマチなどの慢性疾患を有するケースでは、完全に中止することが困難なことが多いようです。長期間NSAIDを投与せざるを得ない場合は、プロスタグランディン製剤を併用することにより消化性潰瘍の発生を減らすことができます。いずれの場合も、症状や程度によりH2ブロッカーやプロトンポンプ阻害剤などの酸分泌抑制剤および粘膜保護剤を投与することが一般的な治療法です。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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