AsiaX

マイコプラズマとは?年齢により異なる症状

 マイコプラズマは「ウイルスと細菌の中間のような存在で、咳が長引く気管支炎や肺炎の原因になる」ということが広く知られているようです。近年、日本国内で患者数が急増しており、シンガポールでも時折小流行があります。今回は通常の感染症(ウイルス、細菌による)と少し変わった経過をたどるマイコプラズマ感染症についてお話したいと思います。
 
 マイコプラズマ感染症の特徴は
 ・潜伏期が長い
 ・年齢によって症状が異なる
 ・血液検査の解釈が難しく確定診断が難しい
 ・効果がある抗生物質の種類が限られている
 などです。
 

長い潜伏期

 通常のウイルスや細菌の潜伏期は1~5日です。対して、マイコプラズマのそれは約2~3週間と長いのが特徴です。風邪症状の人と接触し、1~5日後から症状がある場合などは、ウイルス感染症のことがほとんどで、マイコプラズマ感染症の可能性はほとんどありません。
 

年齢により異なる症状

 マイコプラズマによる肺炎は5歳以上の学童に多く、ピークは5~9歳です。マイコプラズマ肺炎は別名「歩く肺炎」と呼ばれており、ウイルス性や細菌性肺炎と比較して、軽症の場合がほとんどで入院の必要性が少なく、抗生物質の内服だけで良くなります。
 
 乳幼児が感染した場合は、症状が出ないか軽い風邪症状で収まることが多く、ほとんど自然に治癒します。対して、健康な成人(特に20~40代)が感染すると、まれではありますが重症化するケースがあり注意が必要です。なぜなら、マイコプラズマが体内に侵入すると免疫力が働き、これらを排除しようとしますが、免疫力の高い普段健康な人ほど、この反応が過剰に起きることがあり、マイコプラズマだけでなく正常な自分自身の組織も障害してしまい重症化するからです。免疫力の低い乳幼児が軽症で済む事が多いのはこのためです。
 
 典型的なマイコプラズマ感染症の症状は、徐々に悪化する乾いた咳(途中から痰がからんだ咳となる)ですが、高熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感、寒気も主に成人でよく見られます。呼吸器以外の症状では、特に小児に多形紅斑や結節性紅斑などの皮膚症状が少なくなく、成人では心臓や肝臓に障害が及ぶ事もあります。
 

難解な血液検査

 マイコプラズマ感染症の診断に用いられる検査方法は、マイコプラズマ自体の存在を検出する方法ではなく、抗体というものを測定しています。抗体とは、ウイルスや細菌などが体内に侵入してきた時に体内で作られる蛋白の事です。この抗体は、感染後約1週間を経過しなければ検出することができないため、感染初期には確定診断が困難です。
 
 また、この抗体は治癒後も特に小児で約1年間検出されるケースも存在するため、現在と過去の感染の区別がつかないことがしばしば経験されます。それゆえ、マイコプラズマ感染症の治療開始の判断は、困難な事が多く、検査結果よりも症状を重視します。
 

抗生物質の種類

 マイコプラズマ感染症に効果がある抗生物質の種類は限られています。 小児ではマクロライド系と呼ばれる抗生物質(商品名:ZITHROMAX、KLACIDなど)、大人ではマクロライド系に加えニューキノロン系と呼ばれる抗生物質(商品名:CRAVIT、AVELOXなど)が効果的です。
 
 「いつもの風邪とちょっと違う」と感じた時にはマイコプラズマ感染症を疑い、早めにかかりつけ医に相談することをお勧めします。