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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2018年12月29日

オフィス賃貸料も反転上昇中

●騰勢強めつつあるオフィス賃貸相場
 前号で『急騰懸念される住宅賃貸市況』を寄稿させて頂きましたが、オフィス賃貸市況も2017年年央以来、徐々に相場上昇が続いており、ここにきて騰勢が強まりそうです。図1「オフィス・スペース賃貸相場推移」をご参照ください。1998年第4四半期を指数100として、その後の相場推移をグラフ化したものです。紺色のグラフが中心部物件、ピンクが郊外物件、緑が平均値を示しています。

 

●今後のオフィス・スペース供給見通し
 図2「今後のオフィス・スペース供給見通し」をご覧ください。住宅のみならず、オフィスビルについても再開発の動きが活発になっています。2018年第3四半期末の時点のURA資料によると、2019年の竣工予定物件が少ない一方、この統計にはまだ反映されていない、再開発に伴う取壊し案件が決定しており、特にこれから1~2年の間はオフィス・スペースの需給の逼迫感が強まりそうです。

 

●オフィスビルは、大手家主による寡占状態
 分譲により数多の個人オーナが大半を占める住宅賃貸市場とは真逆で、オフィスビルは大手家主による寡占状態にあるため、需給が締まってくると、家主の賃料引き上げ機運が高まる傾向にあります。

 

●TOD(駅ターミナル周辺再開発)

 Transit(またはTerminal)Oriented Development、略してTOD。脱乗用車依存社会を目指して鉄道網を拡充しているシンガポールでは、鉄道利用の魅力を高めるため、駅周辺の開発にも力を入れています。写真のショー・タワーズは1976年に東南アジアの映画王と呼ばれるShaw Brothers社がビーチ・ロードに建てたビルですが、2020年には44年の歴史に幕を降ろすことになるようです。隣地の警察署跡地も、別のデベロッパーが再開発に着手しており、MRT南北線とダウンタウン線の交差するブギス駅周辺の利用価値増進につながると期待されていますが、再開発が完了するまでは暫時オフィス・スペース供給の減少にもつながるでしょう。

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.341(2019年1月1日発行)」に掲載されたものです。

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