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2018年7月27日

バレスティア

 ノビーナから北に向かうと、ショッピングモールや立ち並ぶコンドミニアムによるモダンな風景が、ある地域に入ると急に変化するタイムスリップ感が面白い。“バレスティア”と呼ばれるエリアで、トムソンロードとセラングーンロードに挟まれたバレスティアロードと、周辺地域を指す。バレスティアロードには中華寺、ホーカーセンター、激安モーテル、ショップハウスに商店が並びローカルな雰囲気が漂う。その中でも筆者が気になっていたのが、ホームストアや照明器具店数の多さ!バレスティアロードには、なぜこのような店が多いのか?今回はその秘密を探ったので、このエリアの知られざる魅力とともにご紹介したい。

 

さとうきび農業で発展した歴史

 まずは、バレスティア・ロードの歴史から。バレスティアは、1834年に初代アメリカ領事として着任したJoseph Balestier(ジョセフ・バレスティア)氏にちなんで名付けられた、さとうきびのプランテーションで発展した地域だ。当時は虎が頻繁に出没するような地域で、農業を営む労働力として中国人、インド人が雇われたが虎に襲われる事件もあったとか。1848年にはイギリスの高関税導入により農園を売却することになったバレスティア氏は、1852年にシンガポールを去ってしまった。それが19世紀後半以降になると、裕福な個人や家族が移民し、村をつくり、タロイモやライム栽培、そしてさとうきび農業を続けつつも、このエリアを住宅地へと変容させていく。その人々が住んだ、様々な建築スタイルを取り入れたショップハウスやテラスハウスが現在でも残されている。そのため、バレスティア・ロードを歩くと照明器具店やモーテル、寺に混ざって、色鮮やかでノスタルジックな旧邸宅の景観を楽しむことができる。歩いていて次に何が見えるのか予測不可能な、散歩していて飽きない通りだ。

 

バレスティア通りで照明器具を買う理由

 バレスティア・ロード一帯に照明器具店や、インテリアリノベーション・DIY用ホームストアが軒を連ねているが、最も古いストアのうちの一つは1971年開業だ。ローカルのタクシードライバーや、訪れた照明器具店の店員などに話を聞くと、昔はこの通りには2、3軒の電器屋がぽつぽつとあるだけだったとか。その店が繁盛し始めたら、次々と他の店も近隣にオープンし始め、照明や家のリフォーム、DIYをするために必要なものを揃えるワンストップ・デスティネーションとして有名になった。
 
 “そこに行けばなんでも揃う”店として有名な『IKEA(イケア)』のシンガポール進出は1978年と意外に古い歴史があるが、このバレスティアロードの電器街には、『IKEA』進出前からローカルの人々の信頼を集める何か他の魅力がある。通りを歩いてブランドコンセプトが違う店を何軒もハシゴして、自分の好みに合うアイテムを効率よく見つけられるのが一つ。これは、統一されたコンセプトを提供するストア一軒を見るのでは、得られない経験だ。また、後述するが一つの店でコンセプトががらっと違う商品を扱っているのも魅力だろう。そして、同じような照明でも店により価格帯が大幅に異なるため、数軒まわって値段をチェックすることも大事だと、バレスティアに詳しいタクシードライバーがガイドをしつつ、教えてくれた。

 

クラシカルからモダンなタイルまで豊富に揃う店

 そのドライバーが「ローカルがひいきにする店、ここだけは見ておいた方がいい」というオススメのお店が何軒かあったので、巡ってみた。まず、タイルのサプライヤーである『Lian Seng Hin Trading Co Pte Ltd(リアン・セン・ヒン・トレーディング)』。ビジネス形態は主にB to Bで、個人宅オーナー、インテリアデザイナー、そして建築業者向けにタイルを供給しているが、その中でもメインの客層は建築業者だとか。
 

 
 モダンな印象のタイルから、古典的でデコラティブなタイル、そしてプラナカン柄の可愛いタイルまで、なんでも揃う。余談だが、店員のみなさんが美女揃いだった。これも、親切でおしゃべりなタクシードライバーが教えてくれた通りだった。
 

 

老舗の「照明器具店」

 次に訪れたのが、バレスティアロード沿いに4軒もストア展開する『Chan Huat Group(チャン・ファット・グループ)』のストア『A CHAN HUAT LIGHTING (S) PTE LTD』。1985年創業時には、建築業者向けの小さな電器アクセサリーグッズ店だったのが、事業が成長し現在ではシンガポールを代表する照明サプライヤーとなった。豪華なシャンデリアから、日本人宅で受けそうなシンプルかつセンスが良いアイテムまで、テイストが異なる照明器具が店中に陳列されている。良い意味で、テイストの統一感がない。どのような趣味の人でも、何か気になる商品が見つかりそうな雰囲気なのは、タイル店と同じだった。

 

 
 そもそも、シンガポールは建国当初極度の住宅不足だった背景から住宅開発庁(Housing Development Board:HDB)が1970年代からHDB建設を急速に推し進め、それが後に移民増加とともにコンドミニアム建設ラッシュへとつながった過程がある。これらの店は、住宅建設ラッシュの時代の波に乗り、様々な人の趣味にあう豊富な商品展開を武器に、地元の人々の信頼を集めて事業を着実に拡大してきたのだろう。
 

会員以外も利用可能!素敵すぎるレクリエーション施設

 さて、あまり日本人コミュニティに知られていない素敵な施設を紹介したい。『HomeTeamNS Balestier(ホームチーム・エヌエス・バレスティア)』という、バレスティア・ロードから一本入ったAh hood Road(アーフード・ロード)にあるレクリエーション施設だ。特徴は、『Singapore Police Force(シンガポール警察)』と『Singapore Civil Defence Force(SCDF)NSmen(シンガポール民間防衛隊)』の国への貢献を再認識することを目的に設立された非営利団体により運営されていること。そのため主な会員は警察や市民防衛庁勤務、もしくは勤務していた個人とその家族、親戚となるが、ジム(体操教室)やエクササイズクラスなど、会員以外も受講できるプログラムがある。

 

 

 『BazGym Gymnastics School(バズジム・ジムナスティック・スクール)』は子供向けの器械体操教室で、3歳から通えるプログラムがある。経験豊富なインストラクターがいることで有名で、ローカルの知人数人からも良い評判を聞いている。フラフープ・フィットネス、柔道、ピロクシング、テコンドーなど、子供から大人までゲストとして誰でも受講できるプログラムも豊富。ロビーにカフェ、中庭にはプールや池があり、リラクゼーションに最適な施設だ。

 

バレスティアのおすすめスポット
603 Tau Sar Piah タウ サ ピア

 

 『603 Tau Sar Piah』は、豆沙餅というチャイニーズの伝統菓子を売る、小さな家族経営のお店。パイのようなサクサクの食感のペストリーの中に、黒ごまやピーナッツなど異なるペーストが入ったお菓子で、出来立てほかほかを食べると幸せな気分に!同様の菓子店が何軒もあるバレスティア・ロードでも、このお店のタウ サ ピアの香ばしさは群を抜いている。オススメは蓮のペーストを包んだもの。お店で売っている朝鮮人参入りの冷たいお茶と合わせていただくと、甘さと苦さが調和して日本人の舌に合うことこの上なし!
 

 

603 Tau Sar Piah
603 Balestier Road Singapore
TEL: 6250 0692
http://603tausarpiah.com

写真・取材:舞 スーリ

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