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イーシュン

 

郊外のベッドタウンと言ったイメージが強いイーシュンであるが、実は、自然を多く残し、土地がふんだんに使える環境であるため、意外と老若男女が楽しめるアクティビティ施設が多い。シンガポールの都会的な日常に飽きた人や、子供を連れて行く場所のネタがつきたという人、さらなる刺激を求める人にチェックしていただきたいイーシュンを紹介する。

 

現代にカンポン精神を残す街

イーシュンの街は、現在ロウアーセレター貯水池がある辺りの土地が、19世紀の終わりごろからプランテーションとして開発されだし、そこでの仕事を求めて中華系の人々が集まり住み始めたのを起源としている。周辺エリアの中心地となっていたイーシュンに、戦後になって大きなマーケットができ、人口が集中し始める。1960年代に入るとインフラが整いだし、トタンやヤシの葉を使った建物は頑丈なショップハウスに建て替えられた。さらに1976年から政府による本格的な開発が始まり、熟考された都市計画に基づいてマーケット、ショッピングモール、学校、病院などの施設、そして2つのMRT駅にバスインターチェンジの設置により、イーシュンは便利の良い現在の姿へと変貌する。加えて、2018年初旬、以前からあった駅直結のショッピングモールNorthpoint Shopping Centreが拡張され、飲食店100件を含む計400ものテナントを誇り、最新設備を取り入れた図書館やコミュニティークラブも入ったNorthpoint City(写真①)として再オープンした。

 

❶Northpoint City

近代化し利便性が高まる一方で、イーシュン駅のほど近くには、Chong Pang Marketを含む、古くからある商店と複数のフードセンターからなる昔ながらのショッピングエリアChong Pang Cityがあり、変わることなくにぎわっている。また、イーシュンのHDBには、付近が村であった時代から長く住み続け、互いを見知ったお年寄りが多いため、ボイドデック(共有スペース)にはポットとお茶のセットや象棋(シャンチー)の盤が常備され、住民たちが毎日のように顔を合わすリビングルームのようになっているようなところもあり(写真②)、昔ながらのカンポン(村)精神を持ち続ける人々の暮らしが垣間見れるという一面もある。

アクティビティが盛りだくさん

❸Orto

MRT カーティブ(Khatib)駅から徒歩10分の、以前はBottle Tree Parkの名で親しまれていたOrto(写真③、④)は、2015年にリニューアルされ、エビ釣り、大きな釣り池と9軒のバーやレストラン、さらに、スラムダンクやドッジボールなどで大人も楽しめる「トランポリンパーク」、ペイントボール、ドリフトカート、金魚すくいのできる人工の小川など、盛りだくさんのアクティビティが揃い、休日はにぎわう。SAFRA Yishun(写真⑤、⑥、⑦) には、ジャグジーや子供用のものなどを併設する大きなプールに、様々な種類のスポーツクライミング用ウォール、キャノピーウォーク、ボーリング他、多数の設備があり、アクティブな人たちに人気。クライミングは、初心者向けなどクラスも各種実施しているので、未経験者でも始めやすい。

 

❺SAFRA Yishun

 

Lower Seletar Reservoir Park(写真⑧、⑨)は、対岸が深い緑にふちどられた、景色の良い水辺の静かな公園。釣りができるエリアや、カヤックと10人乗りのドラゴンボートがレンタルできるPA Water-Ventureの施設、子供が水遊びできるエリアなどがあり、幅広い年齢層の人が楽しめる。イーシュンの北西に位置するSungei Khatib Bongsuは、現在シンガポールにわずか1%しか残っていないマングローブ林が見られる貴重な場所。陸路でのアプローチは難しいため、興味のある人は、カヤックツアーを実施するKayakasiaなどの会社に問い合わせるか、Meetupサイトのカヤックやアドベンチャー系のグループに参加するなどして企画が上がるのを待とう。

 

❽Lower Seletar Reservoir Park

 

新スタイルのホーカーセンター

Yishun park hawker centre(写真⑩)は、後継者不足が懸念されるホーカービジネスの将来を切り開くべく、2017年9月にNEAがスタイリッシュなフードホールを経営するTimbre Groupにマネージメントを委託し、既存店に、インキュベータープログラムに参加する13の新規進出店を加えた顔ぶれでオープンさせた、今風で清潔感あるホーカーセンター。ビールを多数揃えたバーコーナー、子供のプレイエリア、イベント企画などで全世代を惹きつける。Midas Every Touch Is Goldはロティプラタとカレーの店。プレーンとネギ入りの2種類のロティプラタ(写真⑪)はオーブンで焼かれるため、サクサクしつつあっさりしており、小さめでヘルシー。

 

❿Yishun park hawker centre
⓫ロティプラタ。Midasでは自慢のカレーも是非試したい。

Nasi Lemak Ayam Taliwangはシンガポールでは珍しいロンボク島の料理アヤムタリワン(写真⑫)の店。シンガポールでもお馴染みのアヤムペンイェットに似た揚げ鶏にフレッシュなチリを使った激辛の手作りソースがかかっており、大変美味でクセになる。伝統の客家豆腐とサンダーティーライスの要素を日本のどんぶりのコンセプトと合体させた料理を出すAh Lock Tofuは、日本のTV番組「ヒャッキン!」で100円グッズを使い調理時間を劇的に短縮させた店。店主が実際に100円グッズを使っているか見に行ってみるのも一興だ。

 

⓬Nasi Lemak Ayam Taliwangのアヤムタリワン。他のホーカーでは滅多に食べられない!

経済が十分に発展し、人々の関心が余暇の過ごし方にも向くようになり、シンガポールではアクティビティの選択肢が増えている。イーシュンに限らず、国内に点在するアクティビティ施設を調べて訪れれば、滞在の楽しみがぐっと増すことだろう。