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ジューチャット

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ジューチャット・エリアは保存地区に指定され、パステルカラーのプラナカン建築が並び、ノスタルジックでフォトジェニックな雰囲気を醸している。それだけでなく、多文化が共存し、さらに2010年代からはおしゃれな店も増えて、幾重にも魅力の重なり合った場所となっている。本号では、中心を通るジューチャット・ロードを北から南下して行くかたちでこのエリアを紹介する。

 

いくつもの文化が交差するジューチャットの成り立ち

現在ジューチャット・ロードの通る一帯は、昔は裕福な地主の所有するプランテーションであった。20世紀初頭、このエリアに自動車が通れる道路の敷設が必要になった際、政府に土地の便宜を図った地主の名前にちなみ、その道路は「ジューチャット・ロード」と名づけられ、周辺は「ジューチャット」と呼ばれるようになった。その後、都心の過密化にともない、中・上流階級のプラナカンや、ヨーロッパにルーツを持つユーラシアンの人々が流入して、美しいプラナカンタイルで彩られた華やかなプラナカン建築(写真①)が次々に建てられ、ジューチャットは郊外の住宅街へと変貌を遂げた。ジューチャット・エリアがプラナカン文化を現在に伝える土地とされているのは、この、プラナカン系住民が多く住んだ歴史による。

 

❶プラナカン建築

 

大戦中から戦後にかけては、近隣のゲイランが赤線地帯となった影響を受け、ジューチャット・ロード沿いにも飲食店などが増え、にぎやかな歓楽街となった。加えて戦後、ジューチャット・ロードの北側にあったチャンギ・マーケットで、マレー系、インドネシア系、ブルネイ系の人々が商売を始めた影響で、ムスリム色の強いエリアもできた。これらの歴史により、北端から南端まで20分ほどで歩けてしまう長さのジューチャット・ロードは、ムスリム色の強い北側、中華色が強くKTV(カラオケ)が多い中央部、プラナカン文化を色濃く残す南側、の3つの顔を持つようになった。

 

ノスタルジックでどこか異国情緒のある北側エリア

ゲイランセライ・マーケットからジューチャット・ロードの北端のエリアにかけては、ムスリム色が強い。マレー料理に使う干し魚を売る店、ハラルの飲食店、庶民的な果物屋…隣近所の店が皆顔見知りの昔ながらの商店街、といった風情に和ませられる。ジューチャット・ロードにはローカル菓子を売る店も多いが、Sweetest Choice by Yatie Karim(写真②)の菓子はパック詰めでなく 、オンデ・オンデなど(写真③)を1つ50セントから手軽に買うことができるので、いろいろな種類を試してみるのにちょうど良い。

 

左: ❷Sweetest Choice by Yatie Karim / 右: ❸オンデ・オンデ

 

また、他地域ではなかなか見つけられないマレースタイルの手作りカレーパフの店が、ここでは数メートルおきに現れる。人気店のSha Zah Confectionery(写真④)では、イギリスのコーニッシュ・パスティに似たサクサクした皮の中に、少し辛いマレースタイルのチキンカレーが入ったもの、ポテトがゴロゴロ入ったものなど、大きなカレーパフが1つ1~1.80ドルで売られている。他にも、小腹が減った時にちょうど良い、皮が固めで小ぶりのエポック・エポック(写真⑤)などもある。エポック・エポックはポテトとアンチョビの2種類の味があり、3つで1ドル。

 

❹Sha Zah Confectionery
❺エポック・エポック

中華文化、KTV、ベトナム料理……混沌の中心部エリア

Masjid Khalidモスクを境とし、その南側は、龍や獅子などのレリーフが飾られたショップハウスが多く見られるようになり、ジューチャット・ロードは中華色が強くなる。(写真⑥)

 

❻中華色の強い建物

 

歓楽街の雰囲気が漂う中華エリアに多いKTVでは、近年はベトナム系の女性が多く働き、一時は周囲にベトナム料理店が増えた。今は数を減らしたものの、人気店Long Phung(写真⑦、⑧)は健在だ。オーセンティックで美味しく、値段も安いため、昼食時、夕飯時には長い列ができる。メニューの品数は多いが、気分に合わせて何を注文してもハズレがない。

 

❼Long Phung
❽Long Phung

 

さらに南へ歩みを進めると、中華まんの店D’bunが現れる。シンプルなチャーシューまんやあんまんの他に、それだけでもおかずになるような美味しい具の入った中華まんが手頃な値段で買える。

 

プラナカン・シックな南エリア

プラナカン文化を色濃く残しているとされるジューチャット・ロードの南側には、2010年代に入り、おしゃれなカフェや雑貨店、バーなどが現れ出した。Cat Socratesは、エリアの草分け的存在で、ローカルデザイナーによる雑貨や、ポストカード、挿絵のかわいい本などセンスの良い品ぞろえが支持されている雑貨店。

 

プラナカン料理店が点在するジューチャット・ロードで、古くからの店は大人数向けの量と値段設定のところが多いなか、昔ながらのプラナカン料理をカフェ風にアレンジした、レトロモダンなSinpopo(写真⑨)なら少人数でも入りやすい。食事メニューはどれも良く考えられており、本格的。デザートも、パンダン・タルトなどローカルらしさを意識した品ぞろえだ。ドリンクも、ロンガン、カラマンシーなどローカルにおなじみの材料を使ったユニークなものを出している。

 

❾Sinpopo

ジューチャット・ロードとイーストコースト・ロードの交差点を西に少し行ったところには、意匠を凝らした外観がひときわ目を引くRumah Bebe(写真⑩)がある。店名の由来であるBebe氏は、廃れ行くプラナカンのビーズ細工を習得し、後世に伝えるため、ここで教室を開いている。一階はショップになっており、雰囲気の良い店内ではプラナカン・スタイルの雑貨やプラナカン菓子などが売られている。

 

❿Rumah Bebe

2㎞にも満たない長さながら、ジューチャット・ロードは、歩みを進めるにつれ、まったく異なった顔を見せる。訪れる人を、それぞれの表情を見逃さないように引き留めさせ、ゆっくりと、非日常を楽しみながら散策させる、実にチャーミングな通りだ。

 

ジューチャットのおすすめスポット
住んでみたい?! 居住用ショップハウスも見物

 

ジューチャット・ロードの脇道であるクーンセン・ロードは、居住用のプラナカン建築のテラスハウスが多く残る閑静な通りで、ジューチャット・ロードとは雰囲気が異なる。ここはなんと、50年代にはギャングのアジトもあったという驚きの過去を持つ。他にも、ジューチャット界隈では、ジューチャット・プレイス、テンべリング・ロードの一部などにもプラナカン建築が見られる。かつて界隈を闊歩していた人たちの生活に思いを馳せながら美しいプラナカン建築の間を歩くのも楽しいだろう。