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ビューティ・ワールド

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2015年末にMRTダウンタウン線の駅が開業し、ぐっとアクセスしやすくなったビューティ・ワールド。知る人にはコリアンタウンとして知られる当エリアだが、駅からすぐのショッピングモール、ビューティ・ワールド・センターに入るフードセンターや、チョンチンナムロード (写真①)などには庶民的な飲食店が並び、いつも活気にあふれている。また駅から徒歩10分弱のところにあるロロン・キラット(写真②)は近年おしゃれなカフェが次々オープンしている注目のストリート。今号ではB級グルメ天国のビューティ・ワールドを紹介する。

 

❶チョンチンナムロード
❷ロロン・キラットにあるカフェ

 

ビューティ・ワールドという名前の由来

MRT・ビューティ・ワールド駅の名前は、戦中、付近にあったアミューズメントパーク「Beauty World」に由来する。アミューズメントパークには、フードストールとゲームを中心に、「ワヤン」や「ケダイ」と呼ばれるステージや、ダンスホール、コーヒーパーラー、映画館などが併設されていた。戦後、アミューズメントパークが流行らなくなると、跡地はビューティ・ワールド・マーケットという名の、百貨店のような幅広い品揃えのマーケットとして使われ、にぎわった。老朽化などにより引き起こされるさまざまな懸念のため、政府はマーケットの近くにビューティ・ワールド・センターというモールを建設し、同マーケットのテナントの移転をうながした。アミューズメントパークもマーケットも、もう存在はしないが、ビューティ・ワールドの名は現在も、ショッピングモールのビューティ・ワールド・センター、ビューティ・ワールド・プラザ、そして駅の名前等に継承されている。

 

B級グルメの宝庫!

周辺には安くて美味しい店が多数存在するが、特に、駅からすぐのショッピングモール、ビューティ・ワールド・センター4階のビューティ・ワールド・フードセンター(写真③)は、週末は待ち時間が1時間にもなるような人気店も多いホーカーセンターだ。昨年、買収話が持ち上がり、テナントが相次いで撤退して閑散とし、惜しむ声が聞かれた時期もあったが、買収話がとん挫したため、今ではテナントも客足も戻り、以前どおりににぎわっている。おすすめストールの1つ、ジン リー サテ ビーフン(写真④)では、他ではあまり見かけない「サテ ビーフン」が食べられる。こちらのサテ ビーフンは、空心菜、イカ、エビ、豚スライス、もやしなど具だくさんの細いビーフンに、サテをディップするソースに似た少し辛いピーナッツソースがかかっていて美味。

 

❸ビューティ・ワールド・フードセンター
❹ジン リー サテ ビーフン

 

またハンバオバオは近年ブームのグルメバーガーショップ。レストランで食べると軽く10ドルを超えるような本格的なビーフバーガーや、表面がカリカリのローストポークベリーに海鮮醤とマスタード、きゅうりをはさんだ「クリスピーポークベリー」(写真⑤)などの独創的なハンバーガーが、5ドル台というホーカー価格で食べられる。さらに、豚金というラーメン店も入っており、日本人の間でもなかなか評判。こちらも5ドル台でいただけるラーメンがあり、かなりお値打ち。

 

❺クリスピーポークベリー

カフェが並び、
おしゃれストリート化したロロン・キラット

ビューティ・ワールド駅から徒歩約10分のロロン・キラット(写真⑥)は、近年おしゃれなカフェやデザートショップが次々にオープンして軒を連ねている。

 

❻ロロン・キラット

 

ロロン・キラットといえば、シンガポールのおしゃれカフェの草分けとしてすっかり名前が定着したカーペンター&コック(写真⑦~⑩)だろう。ビンテージ家具が大好きな2人の女性と、内装やフードのスタイリング担当のフロリスト女性の3人で経営されている。店内のビンテージ家具や雑貨のほとんどはイギリスで買い付けられたもので、什器の家具やディスプレイされる雑貨、食器類に買えるものもある。おしゃれなだけでなく、シェフはロンドンのル・コルドンブルーで学び、有名店・ココマヤでも修業しており、味も本格派。

 

❿カーペンター&コック

 

この通りが華やかになる前からあるファンシーデライト(写真⑪、⑫)は、変わり種のエッグタルトの店としてスタートし、現在はチーズケーキタルトのラインナップも加わり、根強い人気。両方とも、伝統的なタルト生地ではなく、柔らかいクッキーのような生地のカップが特徴で、味は甘過ぎず日本人好み。エッグタルトは卵がふんだんに使われた優しい味の「オリジナル」をはじめ、「カヤ」、「パンダン小豆」、「チェンドル」などローカルらしい種類も。チーズケーキタルトは上品で繊細な味わいで、「ソルテッドキャラメル」や「オレオ」など、魅力的な品揃え。見た目も可愛いのでお呼ばれの時のお土産にも最適。

 

⓫ファンシーデライト

 

ロロン・キラットはペットフレンドリーな通りでもある。オファー ポウ カフェ(写真⑬)は、犬連れで入れるドッグカフェ。店内の一角に囲いがしてあるスペースがあり、連れて来られた犬はそこに放され、他の犬たちと遊ぶ。犬を連れていない客も、囲いの中の犬を自由に触ったり遊んだりできる新しいコンセプトのドッグカフェだ。同店の隣には獣医のヴェト・プラクティス、ドッグトレーニング教室のザ・ポジティブ・アカデミーが並ぶ。

 

⓭オファー ポウ カフェ

韓国系ショップが増加
シンガポールのコリアンタウン

駅から近い韓国食材店、コリアン・ライス・ケーキのスタッフが「この辺りに韓国人が増えたのはこの10年ほど」と話すように、今ではビューティ・ワールド周辺はコリアンタウンと呼べるほど韓国系の飲食店が増えている。オーセンティックで安い店が多く、甲乙をつけるのが難しいが、このエリアでローカルの間でも人気なのが、ブキティマ・プラザに入るミンジア・コリアンフード(写真⑭、⑮)。一般的な韓国料理に加え、70年代から食べられるようになり韓国式にアレンジされたというトンカツやオムライスなどもあり、材料を惜しまず使ったボリュームのある料理がお得感のある店だ。

 

⓮ミンジア・コリアンフード

 

また、コリアンタウンらしく、ヌン スン イ コリアンカフェ(写真⑯、⑰)で「ビンス」を楽しむのも良いだろう。ビンスは近年東南アジアでも人気の韓国のかき氷で、トッピングがとにかく多彩。ジャムやシロップ、オレオを砕いたパウダーやきな粉などで覆われた表面にさらに、アイスクリーム、果物、小豆、トック(餅)などが乗せられる。氷の中にもコンデンスミルクなどが入っており、食べていて飽きがこない。メニューを見ると、どれも美味しそうで迷うこと必至。大振りな器で出されるので2〜3人でシェアがおすすめ。また、こちらのカフェでは韓国でブームのインジョルミトースト(きな粉などを乗せた甘いトースト)も食べられる。

 

⓱ヌン スン イ コリアンカフェ

 

と、どうだろう、このお腹がはち切れんばかりの美味しい情報の溢れ具合。イギリスの植民地時代には、ゴムや果物のプランテーションが広がっていたという一帯。大戦中のブキティマヒルの大激戦で破壊された場所に、アミューズメントパークが作られ、マーケットができた。そして、現在のこの美食ワールドぶり。この変貌を想像できた人が、過去、誰かいただろうか。美味しいものに舌鼓を打ちに来てみてほしい。この先も、誰も思いつかない姿を見せるかも知れないこの地の、今の時代の目撃者となってみるのも面白いかも知れない。

 

 

ビューティ・ワールドのおすすめスポット
腹ごなし散歩に? ブキティマの美しき自然が残る場所

 

 

ビューティ・ワールドはブキティマ自然保護区の入り口でもある。駅から15分ほど歩いたところにブキティマ自然保護区ビジターセンターがあり、そこを起点に、4本のウォーキングルートと1本の自転車ルートがめぐらされている。シンガポール「最高峰」のブキティマ・ヒル(163.63m)へのルートが始まるのもここからだ。また、標識もなく目立たないが、ビューティ・ワールドとブキティマ自然保護区ビジターセンターとの間に(Bike Rental SGとThe Mondrianコンドの間付近)、マレー鉄道の線路跡への登り口があり、鉄道路線が通っていたガーター橋の上にわずかに残る線路が見られる。映画「スタンドバイミー」の気分で写真を撮ってSNSに載せるのも楽しいかも?