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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2017年9月29日

最近の住宅トレンド(2)

前号に続き、最近の賃貸住宅市場でよくあるトラブルやトレンドをハイライトしました。


《駐車スペース削減へ》
1.Car-Lite Society:

環境対策や交通渋滞の解消を目指して、シンガポール政府は公共交通機関の利用推進など、私有乗用車に依存しない社会、Car-Lite Societyを目指しています。また、シンガポール中心部における地価の高騰や乗用車の所有率低下もあり、かつては1ユニットに駐車場1台分を設置する必要があったデベロッパーの義務も緩和されています。最近の、特に小規模のコンドミニアムでは、より駐車スペースが少ない物件も増えました。また、商業施設を含む複合開発物件では共用駐車場に政府が課金するため、住宅を含め全ての駐車スペースが有料となっています。家賃に駐車料金を含めてもらうのかどうか、賃貸交渉の際には注意が必要です。

 

2.GoldenShoeCarParkも閉鎖・再開発へ:
かつてRaffles Place地区には、Market StreetとGolden Shoeという大型の公共駐車場ビルが2棟ありましたが、いずれも再開発のため、その歴史に幕を下ろしました。複合高層ビルに再開発される予定で、同地区の駐車スペースは大幅に削減されます。

 

3.Ecoビルディングでは、駐輪スペース確保に重点:
新規に建設される大型商業ビルでは、特にEco認証を取得する優良物件において駐車スペースを限定し、駐輪スペースを増やすよう行政指導されています。なお欧米系の大手企業では、企業の社会的責任遵守のため、Eco認証がないオフィスビルには入居しない方針の企業もあり、この傾向を加速させています。

 

4.MRTネットワーク、さらに拡充へ:
GPSを利用してのRoad Pricingによる私有乗用車への課金を強化する計画と並行して、MRTネットワークのさらなる拡充が計画されており、近い将来、電車による通勤が当たり前になるものと見られています。香港でも駐車スペースが限られているため公共交通機関がよく利用されており、その結果、地下鉄事業が黒字化し輸送力向上への再投資に繋がっています。
シンガポール政府は、Car-Lite Societyへの政策シフトにより、計画していた新規高速道路計画の一部を白紙撤回、予算配分を見直すことになりました。

 

《新築住宅に煙感知器設置義務》
シンガポールでも、住宅に煙探知機の設置が義務付けられました。ただし、既存の住宅では義務化されていません。ちなみに日本の場合、既存の物件を含む全ての住宅で煙感知器の設置が義務付けられたことはご存知でしたか?

 

シンガポールには木造住宅が少なく、また暖房器具もほぼ使用しないため、日本と比べると火災件数は少ないといえます。ただし台所が火元の火災が少なくないことに加え、高層集合住宅が多いことや人口の高齢化などを背景に設置の義務化に踏み切ったと思われます。筆者の個人的意見としては、一定の階数より上の高層住宅には、さらにスプリンクラーの設置義務化を検討すべきではないかと思います。

文=木村登志郎(パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.326(2017年10月1日発行)」に掲載されたものです。

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