セラングーンロード、スンゲイロード、ジャランベサールと、3つの大きな道路に面したリトルインディアエリア。MRTリトルインディア駅やロチョー駅、ジャランべサール駅など公共交通機関からのアクセスが良いため、旅行客も気軽に訪れやすい。同エリアにはインドの文化を感じられるヒンドゥー教寺院やインド料理店、土産物屋などがあり、他のエリアとは違った雰囲気を醸し出している。


メインストリートのセラングーンロード沿いにはカラフルなショップハウスや、ヒンドゥー教の女神カーリーを祀るスリ・ヴィラマカリアマン寺院などが立ち並ぶ。エリアの中心部には24時間営業の大型ショッピングモール「ムスタファ・センター」があり、食料品や生活雑貨、電気製品などを安く買うことができるとあって連日多くの人が訪れる。特に週末になると、この付近はインド系やバングラデシュ系の買い物客らでごった返す。


この他にも買い物スポットは多く、MRTリトルインディア駅近くにあるテッカセンターの2階ではカラフルな民族衣装を売る店が多く集まっており、ワンピースなどが10~20Sドルほどの手ごろな値段から購入できる。セラングーンロードを挟んだ向かい側にあるリトルインディア・アーケードでも雑貨や衣類などを買うことができ、観光客らで賑わっている。飲食関連では、フィッシュヘッドカレーを提供する「バナナリーフ・アポロ」や、タレに漬けた鶏肉を紙に包んで揚げたペーパーチキンの名店「ヒルマン」などが有名。同エリアだけでインド料理だけでなく、バラエティ豊かな各国の料理を楽しむことができる。
観光客を呼び込むための政策により歴史的建造物も多く保存されており、これらを見て回るのも面白いだろう。カラバオロード近くには、カラフルな外観が一際目立つ「タン・テンニア氏邸宅跡」がある。華僑の富豪だったタン氏が1900年頃に住んでいたこの邸宅は、1980年代に保存が決まり、現在は薬局としても利用されている。
このほか毎年10月~11月には、ヒンドゥー教における新年の祭り「ディーパパリ」が始まり、華やかにライトアップされるのも見どころ。セラングーンロードには夜店が立ち並び、延々と連なるイルミネーションが幻想的な眺めを見せてくれる。1月にも、ポンガルと呼ばれる南インドの伝統的な収穫祭があり、こちらでもライトアップが行われる。
19世紀のインド系移民が起源
リトルインディアの歴史は1840年代にまで遡る。シンガポール都市再開発庁(URA)によると、英国の植民地政策によって南インドからインド人がシンガポールに多く移住してきたことが始まりだ。その後インド東部や北部からも労働者が移り住むようになり、セラングーンロード付近に集まるようになったという。
またURAによると、同エリアには1940年代頃までインド系だけでなく、ヨーロッパ系や中華系などさまざま人種が居住していたという。現在リトルインディアにはヒンドゥー教の寺院だけでなく、モスクや仏教寺院、教会も残っており、多様なバックグラウンドを持った人達が住んでいた名残を感じ取ることができる。
インディアン・ヘリテージセンターによると、19世紀から20世紀初頭にかけては、農業やレンガの製造、家畜の飼育などがこのエリアの主要産業だった。1915年になるとテッカマーケットがセラングーンロード沿いに整備され、20世紀前半まで地域のランドマーク的な存在として賑わっていたという。しかしテッカマーケットは1982年に廃止され、そこで商売をしていた人の多くは、セラングーンロードを挟み向かい側にある、現在のテッカセンターのある場所へ移っていった。この場所は当初ズジャオマーケットと呼ばれていたが、テッカマーケットの役目を引き継ぐ場所として、2000年にテッカセンターと改名された経緯がある。
また1970年代まで、セラングーンロード付近には約6万人もの人が居住していたが、住居は狭く衛生状態も悪かったという。こうした環境を改善するため、政府の住宅政策によって住民の多くはほかのエリアに建設されたHDBへ移り住むようになり、町並みは整備されていった。
近年では、2010年に公園とショッピングモールが一体化したシティ・スクエア・モールが完成するなど、リトルインディア周辺は古い建物と新しい建物が混在したエリアとなっている。ムスタファ・センター付近の散策に疲れたら、すぐ近くにあるシティ・スクエア・モールで一休みするのもいいだろう。(取材協力:インディアン・ヘリテージセンター)
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