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熱帯綺羅

2020年5月17日

東南アジアのトレンドファッション ”バティック”とは?

 深みのある重厚な色合いに、繊細な線で象られた模様——。インドネシアの伝統布地「バティック」を取り入れたシンガポールのファッションブランドが注目されています。ビジネスの場や冠婚葬祭などで正装として用いられていたバティックを、日常使いできるモダンでスタイリッシュな服やバッグにして展開。伝統とモダンの融合で、多くの現代女性を魅了しています。

 

ロウを使って絵柄を染色するバティック

 バティックはろうけつ染めともいい、ロウによる防染を繰り返して模様を染め上げていく技法。下絵を描いた生地にロウ描きして染色。染め終えてロウを落とすと、ロウを施していた場所以外に色が入るという仕組みです。ペン状の道具にロウを入れ手作業で絵付けする手描き技法のほか、銅製のスタンプ型でロウを押す型押し技法があります。複数の色を使う場合は、ロウ描き、染色、脱ロウの作業を繰り返します。乾燥には天日干しが必要で、天候やバティックの柄・色合いにより、完成には数週間から3ヵ月ほどかかるといいます。
 

ワンピースが人気!「YeoMama Batik」

 色とりどりのバティック生地で作られたワンピースやシャツがずらりと並ぶのが「YeoMama Batik(ヨーママバティック)」の店舗。2018年にDesleen Yeo(デスリーン・ヨー)氏とインドネシア人の母親の二人で創業し、バティック生地で作ったチャイナドレスをFacebookやInstagramで販売したところ、瞬く間に人気となりました。伝統的なインドネシア産のバティックと現代の女性のためのモダンなデザインの融合を掲げ、現在はワンピースやジャンプスーツ、スカートやトップスから、子供服、水着まで、幅広い商品を取りそろえています。デザインを手がけるヨー氏が重視するのは「着心地の良さ」。トレンドを取り入れつつも、無駄な装飾を極力省き、気軽に着てもらえるデザインを心掛けているといいます。また「年齢や体型に関係なく身につけてもらいたい」(ヨー氏)との思いから、サイズは多いものでUK6〜UK18まで充実。20代から60代まで幅広いファンを抱えています。
 

ヨーママバティックの店舗では女性向けだけでなく、男性向けのシャツや子供服も展開
ヨーママバティックで人気があるデザインのワンピース($188)

 

美しいバティックバッグの「Gypsied」

 伝統の手描きバティックを使ったバッグを中心に展開するのは「Gypsied(ジプシード)」。創業者兼デザイナーのAqilah(アキラ)氏が2012年に設立し、ジャワの伝統的な模様のバティックを用いたバッグや衣料品をインターネットで販売しています。アキラ氏の祖先のルーツがあるというジャワはバティックの一大産地。「幼いときからバティックは身近な存在。美しいバティックをぜひ後世にも伝えたいと思いました」(アキラ氏)。そこで、ジャワに渡ってバティックと商品生産を共にするパートナーを見つけ出し、ブランドの立ち上げにこぎつけました。ジプシードでは、伝統的な手描き技法のバティックのみを使用。中央ジャワ地方のバティックとカーフレザーをミックスしたトートバッグやクラッチバッグは、ラグジュアリーな雰囲気で人気を集めています。
 

中央ジャワの伝統バティックで作ったジプシードのクラッチバッグ($119.90)
ジプシードではカーフレザーをミックスしたトートバッグ($159.90)も人気

 

バティック×西洋テイスト「Vespertine」

 東洋伝統のバティックに西洋のテイストをミックスした「Vespertine(ヴェスパタイン)は、フランスのファッションブランドで約10年の勤務を経て故郷のシンガポールに戻ったEmmanuelle Chiau(エマニエール・チャウ)氏が2017年に創業。フランス人の母親がバティック好きだった影響で、バティックに興味を持ったといいます。「デザインにもフランスのバックボーンを生かしている」(チャウ氏)といい、すこし大胆なシルエットにバティック生地を融合したツイストトップスはヴェスパタインの看板商品となっています。年1回コレクションを発表しており、2020年コレクションの型押しのバティック生地で作られた赤いワンピースは大ぶりの袖にセンタースリット、さらにウェストマークできるリボンなどトレンドが要所に詰まっています。
 

鮮やかな色合いのヴェスパタインのコレクション
ヴェスパタインの看板商品のツイストトップは美しいシルエットが特徴($89〜$92)

 

東南アジアに広く根付くバティック

 バティックの代表格といえば、ジャワ島の宮廷を中心に発展したとされているインドネシアのバティックです。ジャワ更紗(さらさ)とも呼ばれるインドネシアのバティックは、2009年にユネスコの無形文化遺産にも登録されています。ただ、バティックの技法はインドネシアだけでなく東南アジアに幅広く根付いており、シンガポールでもシンガポール航空のキャビンアテンダントの制服がバティックであることは広く知られています。こちらのバティックは、中国とマレー文化が溶け合うプラナカン文化に由来する模様になっているといいます。
 
 東南アジア各地のさまざまなバティックを取り入れているブランドが「MakerlySG(メーカリーシンガポール)」。インドネシアに加え、マレーシアやタイのバティック生地も使っています。シンガポールシリーズでは、シンガポール航空の制服でお馴染みのバティック生地を用いたカットソーやキャミソールなどを販売。創業者のXinyi(シンイー)氏は「バティックには多彩なモチーフがあり、それぞれが歴史や習慣を背景にした物語を持つ」とバティックの魅力を語ります。バティック調達から商品生産まで全工程をインドネシアに置くブランドが多い中、メーカリーシンガポールは縫製工程をシンガポールでも手掛けており、顧客の要望や体型に合わせて作る、カスタムメイドにも対応しています。
 
 若いデザイナーの手によって、進化を遂げているバティック。シンガポールの思い出に、お気に入りの一着を見つけてみてはいかがでしょうか。
 

自らもミシンに向かうメーカリーシンガポール創業者のシンイー氏
メーカリーシンガポールはインドネシアのほかマレーシアやタイのバティックも採用する

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