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熱帯綺羅

2019年9月25日

タイで愛される魅惑の青いお茶 バタフライピー

 南国を旅していると自然界が作り出す色とは思えないほど鮮やかな色彩の鳥や昆虫、植物に出会うことはありませんか?このお茶を初めて目にした人は同じような驚きを覚えることでしょう。水に青い絵の具を数的垂らしたかのような透き通るコバルトブルーの液体、正体は「バタフライピー」。青紫色をした花で作る100%天然色のハーブティーなのです。その美しい見た目だけにとどまらないバタフライピーの魅力をご紹介します。
 

 

海のような青!見る者を惹きつける色彩

 外国人にはまだまだ珍しいハーブですが、原産地であるタイでは、公園や庭の軒先などいたるところで一年を通して花を咲かせています。タイ語で「アンチャン」と呼ばれるマメ科の植物で、青紫色の花びらが羽を広げた蝶のように見えることから英語では「バタフライ(=蝶)ピー(=豆)」と呼ばれています。

 
 人々を魅了してやまない特徴が、なんといってもその紺碧の海を思わせるような色彩。摘んだ花弁を乾燥させたものに熱いお湯を注ぐと、公園で咲き誇っていた時と同様のはっきりとした青い色がティーカップの中で蘇ります。さらに、レモンやライムを加えると、みるみる青色から紫色に幻想的に変化していく様子が楽しめます。この不思議な現象は、もともとアルカリ性の成分を含む花弁が、レモンやライムが持つクエン酸によって酸性に変わることで起こるものです。日本で青や紫色の花といえば紫陽花を思い浮かべますが、アルカリ性の土壌からは青色の、酸性の土壌からは赤紫色の花が咲くのと同じ原理です。日本の探偵漫画でトリックにも使われたこのユニークな色の変化は、理科の実験材料にもなりそうですね。
 

 

 また、口に含むとマメ科のためか、ほんのり豆の香りが広がります。蜂蜜で甘みを加えたり、ジュースや炭酸で割ったり、酸味のある果物と一緒にカクテルにしたりと、色々な飲み方が視覚と味覚の両方で楽しめるほか、タイ人は料理やデザートにも自然の着色料として上手に取り入れています。もち米に混ぜて赤飯と同じ感覚で作る紫色のごはんなど、タイで青や紫色の料理やお菓子を見かけたら多くがバタフライピーの天然色素によるものといっていいでしょう。
 

青色が生み出す健康パワー

 バタフライピーには目だけでなく、身体も喜ばせるパワーがあります。南国の陽の光をさんさんと浴びた青い花びらには、健康・美容成分がぎゅっと詰まっているのです。青い色を生み出しているアルカリ性の主な成分は、赤ワインなどに含まれるポリフェノールの一種「アントシアニン」で、その含有量はブルーベリーよりも多いとされます。
 
 アントシアニンが、老化の原因となる活性酵素を抑えることや、眼精疲労の回復に効果がある成分として広く注目されるようになる以前から、タイ人はバタフライピーを飲み物としてだけでなく、様々なかたちで生活の中に取り入れてきました。青紫色の眉毛をした幼児を見かけることがありますが、これはバタフライピーが持つ抗酸化物質が血行を良くすることから、花弁をすり潰した汁を眉毛に塗って育毛を促しているのです。白髪や脱毛の予防としても重宝され、バタフライピーを配合したシャンプーやコンディショナーなどが製品化されて生活用品の一部となっています。そもそもタイは美容大国の一つ。美しい髪や肌、アンチエイジングのためにバタフライピーはタイ人には欠かせない自然の恵みなのです。
 

スーパーなどでも手頃な値段で手に入る

 貴重な植物というわけではないため、スーパーなどでも手頃な値段でパックや瓶詰めの乾燥バタフライピーが手に入り、誰でも手軽に自宅でお茶を愛飲できます。一方で、安くて美味しい屋台が立ち並ぶタイでは外食文化が定着しているため、台所がない住宅も多く、「お茶も外で飲むことが多い」という声も聞かれます。
 

 

カフェでフォトジェニックなバタフライピーを

 辛い料理に合うバタフライピーのお茶はタイ料理店に多いドリンクメニューですが、最近はバタフライピーを使った様々なドリンクを看板メニューとするカフェも増えてきました。
 
 巨大な寝釈迦像で有名な寺院、ワット・ポー近くに2016年にオープンしたカフェ「Blue Whale Maharaj(ブルー・ホエール・マハラート)」のスタッフは、「私たちタイ人にとって子供の頃から馴染みのある飲み物ですが、最近写真を撮る目的でバタフライピードリンクを注文するお客さんが目立ってきたので、ラテアートなど目を引くような工夫をしています」と話します。
 

 
 宝石のサファイアのような美しさを見せるアイスティーや、アートが施された芸術品のような青いラテは、どうやら「フォトジェニック」で「SNS映えする」として、大の写真好きのタイ人だけでなく外国人観光客の間でも絶好の被写体となっているようで、時代の流れに乗った新たな人気を見せています。
 
 「微笑みの国」と称されるタイ国。見て心を癒し、飲んで健康を作るバタフライピーがタイに住む人々の笑顔をこれからも作っていくことでしょう。

(取材・文/安部真由美)

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