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熱帯綺羅

2017年11月24日

ローカルフードの代名詞、チリクラブの初代の味を探る

ローランド氏へ託されたバトン
母の想いを胸に、再発進

そんなローランドさん一家に転機が訪れたのは1985年。引退を考えた両親が店の名前を売却し、ニュージーランドへ引っ越すことにしたのです。ニュージーランドで起業も考えたローランドさんですが、シンガポールに単身戻ってきます。そして2000年、念願のレストランを開店させます。店名は昔のお客さんが分かるように「ローランド」と自身の名前にし、看板には自分の顔を描きました。埋め立て工事によりイーストコースト一帯が開発されたため、昔と同じ場所というわけにはいきませんでしたが、海が見える、昔ながらの古き良き時代を彷彿させるような場所をセレクト。レシピは母親が誰にも渡すことなく、大切に保管しておいたオリジナルのもの。

 

口コミでローランドさんが戻って来て店を始めたとの噂を聞きつけた、昔ながらのお客さんたちが徐々に訪れるようになります。そして17年経った今では世界的にも有名なアスリートや、政治家なども足繁く通う、ローカルの人々に愛されるレストランへと成長しました。

 

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ローランドさん。レストランに来たお客さんと話をするのが楽しみで、店頭にも顔を出す。
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母から受け継いだオリジナルのレシピで作ったClassic Black Sauce Prawns(S$24)。

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内装はあえてモダンにせず、母の教えを守り、昔の古き良き時代を彷彿されるものにこだわっている。馴染みのお客さんで賑わう店内。

「お客さんには心を込めて接すること。観光客用に値段を上げたりするようなことはしない。真面目に正直に、一生懸命やっていれば、お客さんはやって来る」という母の教えを守り続けていると言います。初代レシピには卵が入っていなかったそうで、「トラディッショナル」と注文すれば昔のままのチリクラブが楽しめるそうです。チリクラブのソースを付けて食べる中国の揚げパン・マントウは、元はフランスパンを使っていましたが、お客さんの嗜好に合わせて現在のものに変えたとのこと。

 

「シンガポールのチリクラブ」と一口に言っても、店によってソースの味が異なり、店それぞれが、独自の「これぞ」という味を打ち出してしのぎを削っています。さまざまな店のチリクラブを試してみて、自分ならではのお気に入りの味を探し当てるのも、楽しみの1つ。今後もチリクラブの新しい店がオープンして今までにないチリソースを開発し、私たちの舌を驚かせてくれるかもしれません。ですが、今一度、トラディッショナルを味わってみるのはいかがでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.328(2017年12月1日発行)」に掲載されたものです。写真・取材: 平野 かほる

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