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日本人御用達のショッピングモール、リャンコートの歴史

シンガポールの日系コミュニティと言えば、多くの人が真っ先にリャンコートを思い浮かべるのではないでしょうか。街の中心部を流れるシンガポール川に面したこの建物には、大型の日系スーパーマーケットや書店のほか、数多くの日本食レストランやカフェなどが入居しており、日本の食料品や生活雑貨などを求める在星邦人にとって欠かせないスポットのひとつとなっています。そんなリャンコートは、どのように日系コミュニティと共に発展し、現在に至っているのでしょうか。その歴史に迫ってみたいと思います。

 

リャンコートは街の中心を流れるシンガポール川沿いに建てられている

 

33もの日系飲食店、ショップが入居
正月やひな祭りなどを祝うイベントも

現在リャンコートには、地下1階にあるスーパーマーケット「明治屋」や、3階の紀伊國屋書店のほか、飲食店、クリニックなど日系店舗が多く入居しています。建物内にある日系店舗の数は、今年8月時点で33にのぼります。新しい美容室などのオープンが続いており、今後さらに店舗が増える見通しです。

 

1月1日の元旦をはじめ、ひな祭りや子供の日、七夕を祝うイベントや、日本産の食品フェアなども開催されています。正月を祝うイベントでは、毎年獅子舞や餅つきを行ったり、ひな祭りの時には7段の雛人形を飾ったりとさまざまな趣向を凝らしており、多くの在星邦人らで賑わいます。
リャンコートからは日本人会行きのシャトルバスも出ていて、地下でバスチケットを購入することができます。2階にあるサービスカウンターでは、日本語のガイドブックも置かれているほか、建物に隣接するノボテルホテルは日本人観光客もよく利用しているようです。このようにリャンコートは、シンガポールで暮らす日本人をさまざまな面からサポートしてくれています。

 

多数の日本食レストランやクリニック、美容院などが入居している
建物内には多数の日本食レストランやショップがあり、多くの人で賑わう

気軽に日本らしさを楽しめる
シンガポール人や欧米からの訪問者も増加

リャンコートがオープンしたのは1984年で、かつては大手日系百貨店の大丸が入居していました。ファッションブランドや家電量販店、コスメショップなども軒を連ね、毎日多くの在星邦人が訪れていました。しかし2003年に大丸の撤退が決まり、当時の在星邦人の間で大きな話題になりました。大丸の撤退後、リャンコートを訪れる人の数は大きく減ったものの、明治屋が入居したことなどもあり、徐々に客足も戻ってきて現在に至っています。

 

リャンコートの広報を担当するLynn Ngさんによると、かつての賑わいを取り戻すべく、現在でも本格的な日本の商品やサービスを提供する店にテナントとして入居してもらえるよう努めているといいます。

 

一方でリャンコートは、シンガポールの人達が気軽に日本の雰囲気を味わえる場所として、以前とは違った顔を持つようになりました。日本を旅行するシンガポール人が増える中、リャンコートを訪れるシンガポール人も少なくないそうです。建物内を見ても、日本の各都市を英語で紹介するパネルが設置されているなど、現地の人達が日本に親しみを持てるよう工夫されていることが見受けられます。地下1階の理容店で20年以上働いているチェリー・チャンさんも、「大丸が入居していた頃、リャンコートに足を運ぶ人のほとんどは日本人でしたが、現在はシンガポール人や欧米人も多く訪れるようになりました」と話しています。

 

建物内には日本の各地方や都市について紹介するパネルも

 

今年10月のMRT新線開通でアクセスも向上

日本人御用達のショッピングモールとしてだけではなく、シンガポールの人達からも親しまるようになったリャンコート。今後は、シンガポールにおける交通網の発展とともに、その利便性もますます高まることになりそうです。現在MRTを利用してリャンコートに行くためにはクラークキー駅から徒歩で10分ほどかかりますが、現在、建物のすぐ近くでダウンタウン線新線のフォートカンニング駅が10月の開通をめざして整備されており、大幅なアクセスの向上が見込まれています。

 

今後もリャンコートは、シンガポールに住む日本人の暮らしを快適にサポートしてくれるとともに、地元の人達が日本を身近に感じることのできる場所としても、存在感を発揮していくことになるのでしょう。

 

付近では、今年10月に開通するMRTダウンタウン新線のフォートカニング駅が整備されている