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シンガポール人が集うリバーサイド、カランでスポーツを楽しもう

カラン・リバー周辺では、住宅の建設など再開発が行われる一方で、ランニングやサイクリングなどスポーツ向けの環境整備も進められています。2014年にはシンガポール・スポーツ・ハブが完成し、よりスポーツを身近に楽しめるようになったカラン地区。今回は再開発の現状や、スポーツ振興に向けた取り組みなどを取り上げたいと思います。

 

カラン・リバーではドラゴンボートの練習、川沿いではランニングやサイクリングが盛んに行われている

 

シティを一望できるカラン湾
市民の憩いの場所に

MRT環状線のスタジアム駅を降りて少し歩くと、目の前にカラン湾が広がります。この辺りからはマリーナ・ベイ・サンズやシンガポール・フライヤーなどを含め、都心の景色を一望でき、夜になると周囲のコンドミニアムの明かりが水面に写り、美しい風景を演出してくれます。また川風が涼しく、散歩を楽しむ人も多く見られます。

 

2007年には、インドアスタジアムの隣にあるショッピングモールが「カラン・レジャーパーク」にリニューアルされ、買い物にも便利になりました。今後もこのエリアでは、さまざまな形で開発が計画されています。都市再開発庁(URA)によると、今後20年の間にカラン・リバー付近では10万戸の住宅が整備される予定とのこと。スポーツハブからカラン・リバーを挟んで向かい側にあるカンポンブギス地区でも、現在住宅の建設が進んでいます。さらにこの付近にあるカラン・ディストリパークや工業団地では、住宅や娯楽施設を含む複合施設への再開発が計画されています。

 

カランを含むシンガポールのウォーターフロントは、2006年から公益事業庁がABC(Active Beautiful Clean)ウォータープログラムと呼ばれる、河川の水質向上およびレクリエーション施設の整備に向けた取り組みを展開しています。同プログラムの認定事業のひとつとして、スポーツハブ周辺にはさまざまな植物が植えられ、緑化とともに生物多様性の保護が図られています。このようにカラン地区では、都市開発だけでなく環境保全に向けた様々な取り組みも進められています。

 

カラン湾からはマリーナ・ベイ・サンズやシンガポール・フライヤーを含め、シティ全体を見渡せる
カンポンブギスでは現在も住宅の建設が進んでいる

存在感増すスポーツハブ
月57件ものスポーツイベント

カランのスポーツハブ周辺はランナーやサイクリスト、ビーチバレー、ウォータースポーツなど様々なスポーツを楽しむ人たちでにぎわいます。

 

シンガポール・スポーツ・ハブは、今ではシンガポールの新たなランドマークとして定着し、スポーツ振興においても欠かせない存在になりました。シンガポールのスポーツ政策を担うシンガポール・スポーツ・カウンシルは、「Vision 2030」と呼ばれる国民の健康増進プランの中で、ナショナルスタジアムやプール、ジムなど各種施設を備えるスポーツハブを、スポーツ振興のための拠点に位置づけています。

 

スポーツハブでコーポレートコミュニケーションを担当するチン・サウ・ホーさんによると、同施設では2015~2016年にかけ毎月平均で57件ものスポーツ関連イベントが開催されており、昨年だけで200万人以上が訪れたとのこと。スタジアム周辺でもフィットネスなどのイベントが頻繁に行われており、今後もさまざまなイベントが開催される予定です。

 

スポーツハブ全体の模型。ジムやプールなど多様な施設を備える
スポーツハブ周辺ではフィットネスなどのイベントが盛んに行われ、多くの人が汗を流す

 

カラン・リバーでは、週末になると龍を模した細長いボートを約20人で漕ぎ、その速さを競う、ドラゴンボートと呼ばれる競技の練習も行われています。スポーツハブがオープンし、一般向けにカヌーやカヤックの貸し出しも始まったことで、より気軽にウォータースポーツを楽しめるようになりました。カラン・レジャーパークには、シンガポールで最も広いアイススケートリンクもあるなど、多様なスポーツに触れることができます。

 

このほかURAは、カラン・リバー上流にあたる島中央部のローワー・ピアス貯水池から、ビシャンやトアパヨ、カランを経由し、市街地までをつなぐ道路を整備する計画です。このプロジェクトにより、カラン・リバー流域の住民にとっては、近隣エリアへのアクセスがより容易になるうえ、ランナーやサイクリストにとっての利便性もこれまで以上に高まる見通しです。現在、カラン・リバーを横切るパン・アイランド・エキスプレスウェイ(Pan Island Expressway:PIE)を越えるには、サイクリストたちは自転車を担いで陸橋を渡らなければならず、便利とは言い難い状況です。URAはPIEの上を通る螺旋形の橋を建設することなどを計画しており、これによりローワー・ピアス貯水池から市街地までのリバーサイドが、整備された一本の道でつながることになります。

 

カラン地区、そしてカラン・リバー流域は市民の憩いの場としてだけではなく、シンガポール島内の人々がさまざまなスポーツを楽しみ、健康を育むことのできるエリアとして今後も注目を集めそうです。