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建国期の空を守った戦闘機 シンガポール空軍博物館

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1970年に配備された戦闘機「ホーカーハンターF.74S」

海上交通の要衝であるマラッカ・シンガポール海峡に近く、アジアの地政学上重要な位置にあるシンガポール。2015年の軍事予算は国家予算のおよそ2割と世界的に見ても高い水準にあります。約1万3,500人を擁するシンガポール空軍(The Republic of Singapore Air Force : RSAF)は、マクダネル・ダグラス社(現ボーイング社)による高価なF-15戦闘機を配備するなど、小規模ながら高性能な機体を揃えており、インドネシアなど周辺国で地震などが発生した際には救援活動に参加するなど、防災の分野でも活躍しています。身近なところでは、隔年で開催される「シンガポール・エアショー」で、同空軍のアクロバットチーム「ブラックナイツ」が技術的にも高度な迫力のあるパフォーマンスで楽しませてくれます。
そんなシンガポール空軍は、1965年にシンガポールがマレーシアから独立した後、どのような形で誕生し、発展してきたのでしょうか。今回ご紹介する、パヤ・レバの空軍基地近くにあるシンガポール空軍博物館を訪れることで、過去に活躍した戦闘機などを間近で見ることができるとともに、その歴史も知ることができるでしょう。

シンガポールの国防上、重要な機体を展示

MRT東西線ユーノス駅から94番のバスに乗り、およそ20分程度で博物館に到着します。博物館は市街地中心から少し離れた静かな場所にあり、入口付近に展示された航空機が出迎えてくれます。入館料は無料で、1階には戦闘機やヘリコプターなどが数多く展示され、2階の展示からはシンガポール空軍や国の歴史を学ぶことができ、ミリタリー好きの方や子供以外でも楽しめるスポットになっています。博物館は当初、1988年に当時のチャンギ基地近くに設立され、その後基地の移転に伴い今の場所に移転した経緯があります。
現在の空軍の前身であるTHE SINGAPORE AIR DEFENCE COMMAND(SADC)が1970年に導入した最初の戦闘機である「ホーカーハンターF.74S」など多数の戦闘機やヘリコプターのほか、1970年にイギリス軍から譲渡され、約20年間にわたりシンガポールの空を守り続けたブラッドハウンド対空ミサイルなどが展示されています。同博物館のガイドであるテンさんは「この博物館には、歴史的意義のある展示物が揃っています」と話します。

1968年に配備されたセスナ。機体には、英国空軍の赤青2色のエンブレムを、シンガポールのナショナルカラーである赤に統一したものがプリントされている。

セスナ2機からのスタート、高性能機を多数揃える空軍に

2階には空軍の歴史を記したパネルや過去に使われていた制服、戦闘機の模型などが展示されており、軍の視点からシンガポールの歴史を知ることができます。1965年の独立当時から、空、陸、海を守る独自の軍を持つことはシンガポールにとって最優先事項のひとつだったといいます。1967年には当時の英国のウィルソン内閣がスエズ運河以東からの撤兵を決め、当時シンガポールに駐留していた英国軍も3年以内に引き上げることになったため、独自の軍を持つ必要性が高まりました。
英軍が撤退を決めてから8ヵ月後の1968年9月に、SADCが当時のセレター基地に設立されました。当初、軍のエンブレムは、英国軍の赤、青2色の円を基調にしたものを、シンガポールのナショナルカラーである赤に統一したものでした。
今でこそ200機以上の航空機を備えるシンガポール空軍ですが、当初配備されたのはセスナ2機のみ。そのうち1機は館内に展示されています。館内のパネルには、当時のエンジニアの回顧が記されています。「もし1機が故障したら、われわれはセスナ1機だけでシンガポールの空を守らなければならない」。わずかな装備しかなかった当時の軍では、エンジニアへのプレッシャーも相当のものだったことが伺えます。
翌1969年にはヘリコプターが新たに配備され、技術者など人材育成のための学校が設立されるなど、徐々に環境整備が進んでいきます。その後もシンガポールの経済発展とともに軍備も増強・近代化され、現在の組織へと発展していきました。館内には、年代ごとの軍備についてミニチュアも展示してあり、軍が発展していく様子を辿ることができます。
平日は人も少なく、ゆっくり見て回ることができるこの博物館。歴史好きな方は、ほかの博物館とは一味違った視点を得られるかもしれません。

豊富な写真とともに、空軍の歴史を紹介している
シンガポールエアショー2014での、ブラックナイツによるパフォーマンス。アクロバティックな動きは、多くの人を魅了する。Photo by Zexsen Xie – Black Knight Singapore 1