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気軽に足を運べる自然の宝庫 コニー・アイランド

MRT北東線のプンゴル駅から84番のバスに乗って5分。都会のイメージが強いシンガポールとは思えない自然の景色を楽しんでいると、さらに10分ほどで「プンゴル・ポイントパーク」に到着します。そのバス停のすぐ近く、ジョホール海峡に面したプンゴルの沖に浮かぶ小さな島が「コニー・アイランド」。2015年10月にオープンした公園です。ここは「近場で自然を味わいたい」「サイクリングを気軽に楽しみたい」という願いを簡単に叶えてくれます。

 

自然の中のサイクリング。道は平坦で走りやすい。サイクリング、ウォーキングとも左側通行となっている。なお、自転車のレンタル時には代表者の身分証明が必要。

 

実は意外な?コニー・アイランドの歴史

この島の特徴は「コンパクト」。面積は50ヘクタールほどで海岸の長さは約2キロ。島へは船を使わずに橋で渡ることができます。遊歩道・サイクリング道路は2.4キロで、自転車なら約30分で島内の西側の入口から東側の入口まで行くことができます。

 

コニー・アイランドは以前「セラングーン・アイランド」という名前でした。過去に遡るとこの島は定期的に所有者が変わっており、1930年代はかの有名なタイガーバーム財閥の胡文虎(アウ・ブーンハウ)と胡文豹(アウ・ブーンパー)兄弟の持ち物でした。島内に彼らの別荘が現存しており、その面影を金網越しに見ることができます。そして1950年代にこの島はインド人ビジネスマン、グラームマフムード氏の手に渡りました。彼はニューヨーク近郊のリゾート地として知られるコニー・アイランドのような場所を作ることを夢見ていたそうで、それゆえ島の名称を「コニー・アイランド」と変更しました。しかしあまり浸透せず、今でもタクシーの運転手には「セラングーン・アイランド」と伝えた方がわかりやすいこともあります。

 

1950年代以降になるとオーナーは数回変わり、1975年に政府がタイのビジネスマンから島の所有権利を獲得。政府主導のもと埋め立てなどにより土地を拡大しました。住宅建設の計画もありましたが、結果的には国立公園局が2014年から約1年3ヵ月、総工費約300万Sドル(約2億4,700万円)を費やし、自然がほぼそのまま残された公園を完成させました。現在は島内に絶滅危惧種を含む157種の動物、86種の木が確認されています。手付かずの自然を保護するため、開門は7時から19時のみで、イーストコーストパークのように宿泊を伴うキャンプをすることはできません。

 

コニー・アイランドの入り口。森林の間から吹く風はここが赤道近い場所であることを忘れさせてくれる。
ビーチのベンチで待っていると猿やトカゲが現れることも。思っている以上に大胆に近づいてくるので手荷物などには注意が必要。

 

島内サイクリングは出会いがいっぱい

しかし、この公園はアイランドサイクリングを気軽に楽しむことができます。レンタル自転車屋は現在2軒。マウンテンバイクや親子乗せバイクなど、1時間8Sドル(約660円)でさまざまなスタイルの自転車を選ぶことができます。サイクリングコースは大きく分けて2つあり、おすすめは島内の端から端まで往復するルート。道がシンプルなので迷うことがありません。もう1つ、島内の左側にある整備されたサイクリングロードから島の入り口に戻るルートがありますが、こちらは島内を往復するルートの約2倍の距離があるため、軽装の場合はあまりおすすめしません。

 

また野鳥の鑑賞をテーマとしたボードウォークもおすすめです。土地の高低が少なく距離も短いので家族連れや女性でも十分楽しむことができます。トイレは島内に1ヵ所しかなく、飲み物などを買う売店もないので、事前にトイレを済ませ飲み物を用意しておきましょう。

 

サイクリングコースを外れてビーチで休憩していると、猿や大きなトカゲなどの野生動物をすぐ近くで見ることができます。餌やりは罰金の対象になるので見るだけにしましょう。そのほかにもいくつかの注意事項があります。自然の宝庫ゆえ島内には害虫もいます。ビーチ散策時はサシチョウバエなどのサンドフライに刺されないよう注意が必要です。また目の前がマレーシアなので、スマートフォンが勝手に電波をキャッチし、国際ローミングを始める可能性があります。心配な場合は機内モードにするなどの対応を行うとよいでしょう。

 

コニー・アイランドはシンガポール中心部から程よく離れているので、有名な公園のように「休日にありがちな混雑」は見られません。また公園前のショッピングモールにはいくつかのレストランがあり、行列なしで利用できます。早起きして訪れて「いつもとは少し違う朝」を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

自然のまま残されたビーチはシンガポールでは珍しい。ビーチの奥に胡兄弟の別荘跡地がある。