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南国色の鳥たちと戯れるパラダイス

緑の生い茂るジャングルの中に、極彩色の羽を持つ鳥達が自由に飛び回り、遊ぶ風景。数年前、友人に誘われてシンガポール西部にあるジュロン・バード・パークを初めて訪れた時、絵の中でしか知らなかったような風景が目の前にあることに驚きました。緑濃い木々と、赤、黄、緑、青、オレンジ、紫、白、黒、と鮮やかな色の羽毛をまとった美しい数々の鳥達。ネットで覆われた巨大なロフトの中という人工的な環境だからこそ見ることができる光景ではあるのですが、その中で自由に過ごしている鳥達の姿は強く印象に残りました。

African Waterfall Aviary内の遊歩道沿いの手すりの上に佇んでいたツキノワテリムク。東アフリカに多いムクドリ。

 

ジュロン・バード・パークは、シンガポール動物園、ナイトサファリとともにWildlife Reserves Singaporeという民間企業によって運営されています。1968年、当時の財務大臣ゴー・ケンスィー(Goh Keng Swee)氏がブラジルのリオデジャネイロで開催された世界銀行の会議に出席した際、現地の動物園で鳥達が自由に飛び交っている展示方式を見てアイディアを得たことがそもそもの始まり。ゴー氏の案を元に、熱帯の鳥達を集めて、鳥達が自由に飛び回れるバード・パークを建設するという計画は、ジュロンの小高い丘の西側で実現されることになり、1971年1月3日に正式に開園しました。

園内には、東南アジア、オセアニア、南アメリカ、アフリカなど世界中の熱帯地域に生息する鳥を中心に約600種類、約8,000羽が飼育されています。

園内で人気スポットのひとつがLory Loft。ゴシキセイガイインコ、オトメズグロインコ、アオスジインコなど、南太平洋地域に広く分布する色鮮やかな小型のオウム(Lory)が約1,000羽もいます。人馴れしている鳥達は頭や肩に乗ってくることも。それを人間達が喜ぶことも、ちゃんと心得ているようです。果汁をミックスしたネクターが入った器を見ると、あっという間に鳥達が集合。代わる代わる器の中にくちばしを差し込んで、ネクターをおいしそうに飲む仕草は見ていて飽きません。

Lory Loftにいたオトメズグロインコ。極彩色のコントラストが美しい鳥。

ロリー・ロフトの前から園内を走るパノレールに乗って隣の駅にあるのが、African Waterfall Aviary。Aviary(鳥小屋)と呼ぶのはためらわれるほど大きなスペースですがそれもそのはず、鳥を飼うために囲った、つまり鳥小屋としては世界最大。ここには「青い宝石」とも呼ばれるツキノワテリムクや、赤い羽根が美しいベニハチクイ、ホロホロチョウなどアフリカ原産の鳥達が約60種いて、鳥達が枝から枝へ飛び回る姿や、遊歩道沿いのえさ台でえさをついばむ姿、岩のくぼみで水浴びをする姿など、鳥達の自然な様子を、実際の自然の中ではあり得ないほど近くで見ることができます。ふと、頭上を見上げると、木の上に設けられた巣箱を出入りする鳥の姿も。いろんなところで鳥達が自由に過ごしています。

African Wetlandsのホオジロカンムリヅル。黄色い冠羽がエレガント。

25周年を迎えた2006年に大改装が行われた際、新しく作られたのがAfrican Wetlands。ユネスコの世界遺産に指定されている南アフリカのセント・ルシア湿原を再現、人と鳥類の共生をコンセプトにしたスポットで、2007年のASEAN新観光アトラクション最優秀賞を受賞。ここには、ホオジロカンムリヅルや、くちばしの赤い色、黄色い目、体の黒と白のコントラストが鮮やかなクラハシコウなど、アフリカ大陸でしか見られない珍しい鳥達を間近に見ることができます。

 

他にも色とりどりのコンゴウインコの一群や、フラミンゴ、ペリカン、ダチョウ、エミュなど、園内を歩きまわるだけで世界中の様々な鳥達にめぐり会うことができます。

ネクターに集まってきたロリー達。左からアオスジインコ、オトメズグロインコ、ゴシキセイガイインコ。

ジュロン・バード・パークの発案者であるゴー氏の願いは、人々が日ごろの都会での生活からちょっと離れて、自然と共にリラックスできるような憩いの場にすること。緑の木々に囲まれて、色鮮やかな鳥達を眺めながら過ごせるこの場所は、鳥達以上に人間達にとって楽園なのかもしれません。

園内のあちこちに池が設けられていて水鳥も数多く飼育されている。

姿の美しさと羽毛のピンク色が華やかなフラミンゴの群れ。