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幸運への道案内。星と檸檬の占い師

人口500万人が淡路島ほどの面積に暮らすシンガポールですが、多民族のお国柄だけあって、規模は小さくても多様な文化・生活習慣が見られます。各民族にはそれぞれの暮らし方があり、価値観があります。言葉、食べ物や衣服、それに宗教や占いも人種や民族によって多くの種類があります。今回ご紹介するのはインド人の星占い師。シンガポールには中国人の四柱推命、風水占い、ユーラシアンの人々が好むクリスタル・ボールを使ったジプシー占いやタロット占い、またオーラの色分析をするオーラ占い、それにインドの数占い、星占いなど占い師も数多くいます。シンガポーリアンは割と気軽に占い師を訪れ、人生の一大事を決断する際に、占い師の予見を参考にするそうです。また単に将来を占ってもらうだけでなく、悩み事を相談する人も多いようです。

カリスマ占い師というより近所の優しいおばさん、といった感じのグル・アマ。

 

星占い歴38年のグル・アマ

有名な占い師が数多くいるシンガポールでも、人種を問わず多くの人々から「グル・アマ(師匠のおばさん)」と親しまれているインド人の星占い師を訪ねてみました。人の将来を見る能力に気づいたのは、まだ6歳だったというグル・アマは、10代の頃から友達の運勢を見たり、相談に乗ったりしていたそうです。やがて多くの人々が訪ねてくるようになり、20代半ばで占い師として独立。以来38年、インド人だけでなく、政府の要人も含めて多くの中国人、外国人も彼女を頼ってきました。海外からも予約が入ります。カジノの経営陣から「シンガポールでカジノは成功するだろうか」という相談もあったそう。「100%大成功するとは言えませんが、多くの人々が来て盛況となるでしょう」と答えたそうです。

中には「今日、麻雀で勝てるだろうか」と電話で質問してくる人も。「勝ち負けではなく、今日はこんな手で勝負してみると幸運がめぐってきますよ、と教えるだけ。でもあまり大金を賭けないで、ほどほどにね、といったアドバイスをします。最近多いのは勉強でストレスを抱える子供と悩める母親。投資やギャンブルで破産する人、不倫や失恋の悩み相談はいつの時代にもあること」。占い師の自宅は、時に駆け込み寺にもなっています。

占い師を訪ねる時は、ウエット・マーケットやローカルの花屋で緑色のレモンを5つ買って行くのをお忘れなく。

ガネーシャの像はグル・アマの守り神。

7世代を経由するカルマ、レモンの中に見る小宇宙

人ひとりの運勢を見るためにはその人の3世代前までさかのぼり、もし子供、孫、ひ孫がいれば彼ら子孫の運勢も見る必要があるというのがグル・アマの考え方です。先祖のカルマ(業)は引き継がれるし、妻や夫、兄弟姉妹でも相互に影響し合うということ。人はそれぞれ生まれつき持ったカルマがあり、それが運勢を決定付ける元となっているから、すべてを変えることはできないそうです。ただ、今抱えている問題をどのように乗り越えたらいいか、あるいは将来起きることが予想される問題にどう対処すれば良いか、という知恵を授けることが占い師の役目だと言います。必要な情報はその人と家族の生年月日と名前。他の星占いと違うのは、レモンを切って予想した運勢を確認すること。レモンは緑色の丸いものを使います。切る前にクムクマム(Kumkumam)という赤い粉をレモンに塗ります。人はそれぞれ小宇宙の中に存在しており、その様相はレモンの中にあらわれるというのです。「人は生まれた時から背負っているカルマがあります。でも考え方や行動を改めることで、運勢の流れを良い方向に持って行くことは可能なのです。この仕事をしていてよかったと思うのは、困っている人の人生を変えることができること。グル・アマのおかげで幸せになりました、という報告を聞くのが一番うれしいですね」。占い師は両手でレモンを包みこみながら目を細めて語りました。

部屋には額縁や花環がたくさん飾られていて、ジャスミンとお香の香りが漂う。