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熱帯綺羅

2011年5月16日

ユーラシア大陸最南端の国境「コーズウェイ」

朝晩は通勤ラッシュ生活のために国境を越える

一日に30万人もの人々が往復する日もあるというコーズウェイは、朝晩の通勤時間には渋滞となります。マレーシア側から毎日職場や学校へ通う人が大勢いるのです。シンガポール・ドルで得た収入はマレーシア・リンギに換えると2倍以上になるからです。そんな経済格差が国境超え通勤に拍車をかけてきました。毎日通勤・通学する人々にはスペシャルパスが発行されますが、他にもこの国境を頻繁に利用する人が大勢いるわけです。その膨大な数のパスポートをチェックするために大きな役目を果たしているのが日本の技術によって開発された指紋認証システムです。コーズウェイの移民局はこのシステムを世界で最初に導入した場所なのです。この機械が導入されてから、イミグレーションの通過が劇的に早くなりました。

コーズウェイの手前でシンガポールのイミグレーションを通過して出国手続きをし、コーズウェイの向こう側ではマレーシアの入国手続きをします。空いていればその間わずか20分ほど。ただしハリ・ラヤや旧正月前には、この国境を通過するのに数時間を要することもあります。普段シンガポールに住んでいるマレーシア国籍の人々がいっせいに里帰りするからです。

国境を越えればそこはモスクの祈りが響き、サロンをまとったマレー人女性が歩くのどかな国、という印象はいまやすっかり薄れてしまいました。イミグレーションのビルからはエスカレーターでまっすぐシティー・スクエアのショッピング・センターに連結しており、そこはシンガポールとほとんど変わりない店が並ぶ場所となっています。マレーシアらしい雰囲気を感じるには、旧市街やコタ・ティンギなどに足をのばす必要があります。郊外へ行けば、マレーの村落カンポンもあれば、水上家屋の並ぶ漁村もありますし、アピアピと呼ばれるホタルも見られます。

シンガポールからは国境を越えてドライブ旅行やゴルフに出かける人々もいますし、シーフードを食べるという目的だけで出かける人もいます。コーズウェイは両国を分けるボーダーではなく、人々の暮らしを支える架け橋になっているのです。

もともとひとつの国だったマレーシアとシンガポール。自由に行き来できる今、国境の意味とは何か。コーズウェイを通るとそんなことを考えます。

文= セガラン郷子、写真=Eugene Chan

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.189(2011年05月16日発行)」に掲載されたものです。

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