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いつもと違う角度から街を眺めるシンガポール・シティ・ギャラリー

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なじみの街を、鳥が空を飛ぶぐらいの高さから眺めたらどう見えるんだろう?そんな子供のような夢想を疑似体験させてくれる空間が、実はあります。マクスウェル・フード・センターの隣にあるURAセンター(都市再開発庁(URA)のビル)にあるシンガポール・シティ・ギャラリーがそれ。2階のエントランスから入ると、パノラマ画面にぐるりと囲まれた空間に迎えられ、画面上には、シンガポールの様々なシーンが一日の時間の経過とともに映し出されます。なじみのあるホーカーセンターの喧騒の様子から、HDBが立ち並ぶ住宅地、ボートが港を出ていく光景、チャンギ国際空港から離陸・上昇するジェット機、深夜になっても賑わいを見せるシンガポール川沿い、子どもたちが駆け回る広い野原など、シンガポールには多種多様な人々が住んでいて、実に様々なシーンがあることを改めて感じます。

 

パノラマ画面での映像をひと通り見た後、順路に沿って進み、階段を上がっていくと3階部分に出ます。少し進むとバルコニーのようになっていて、2階にあるシティエリアの巨大な模型全体を上から眺めることができます。模型は400分の1スケール。東側のエリアは現時点では木で形だけを模した仮の模型がたくさん並んでいますが、ちょうどシェントンウェイ界隈から西側にあたる部分は、本物そっくりに作られて彩色も施されたビルの模型がぎっしりと並んでいます。普段地上にいると他の建物に遮られてよく見えていなかったり、少し離れた場所にある建物などとの位置関係が良く見えてきます。滅多に通らない道沿いにある建物が実は自分が良く知っているエリアから近いことに気付いたり、さらにはオーチャードとタンジョンパガー、あるいはリバーバレー地区とブギス界隈など、それぞれにはなじみがある、少し離れたエリア同士が地理的にどのような位置関係にあるのか、ビルの模型を見ながら確認して気付くこともたくさんあって、眺めていて飽きることがありません。


シティエリアの模型をしばし眺めた後、さらに奥に進むと、2001年に策定されたコンセプトプランと、2008年に策定されたマスタープランについての説明があります。コンセプトプランは1971年に策定されて以来10年ごとに見直しが加えられ、シンガポールの都市開発において40〜50年という長期的なスパンでのガイドとなっています。マスタープランは、コンセプトプランが示すビジョンをより詳細で具体的な形に落とし、10〜15年という中期的なガイドになるものです。街区ごとに地図上でプランを示した大判の資料がURAセンター1階に常時置いてあり、自由に閲覧することができます。

 

さらに奥には、制限時間内に都市を建設するゲームや、インタラクティブな画面で大量高速輸送(MRT)網の計画を見ることができるコーナーなどもあり、大人も子供も画面に触れながらシンガポールの都市開発について自主的に学べる工夫がされています。

 

2階に下りると、シティエリアの巨大模型を間近で見ることができます。見慣れている建物はもちろん、意匠をこらしたビルの模型をつぶさに見たり、サルタン・モスクなど有名な寺院の模型を見つけるのも平面的な地図を辿るのとは違った面白さがあります。

 

URAセンターの1階部分は展示スペースとして開放されています。マクスウェルロードに面したガラス張りの空間には、シンガポール全体の大きな模型があり、現在の土地利用の状況や、公園予定地、保護地区に指定される予定の場所などがカラフルなピンで示されています。

 

このスペースで、現在「アーバンスケッチャーズ・シンガポール」の展示が2011年12月24日まで行われています。「アーバンスケッチャーズ」とは、世界中の街でスケッチをしている芸術家たちのブログコミュニティ。シンガポールでは建築家のティア・ブーンシンさんを中心に活動しています。毎月最終土曜日にスケッチウォークを開催、先月は約50人が参加したそうです。2009年ごろから今年にかけて参加者によって描かれたスケッチが、10月に『Urban Sketchers Singapore』という一冊の本になりました。ティアさんによると、日本人スケッチャーの参加はまだないそうですが、「街をスケッチすることに興味がある方は大歓迎」とのこと。シンガポールの街をスケッチを通して眺めるのも、新たな発見につながるでしょう。絵を描くのが苦手でも、スケッチ作品を通じていつもと違う視点で街を眺めてみることができます。

 

また、都市の過去だけでなく未来像を知ることで、街の今の姿が持つ意味がより深く見えてきそうです。