外観は中国寺院の様相で寺院名も中国語で「洛阳大伯公宮」とあり、道教に仏教も共存、その寺院の中に回教やヒンズー教が混在しているとは想像もつきません。
まずは本堂に入ると、中国の神様・トゥア・ペックコン(Tua Pek Kong)大伯公の巨大な像が迎えてくれます。そこを通り過ぎると、すぐ隣には回教寺院・モスクのパゴダと同じ形のデザインの小さなお堂がありました。回教のシンボル、月と星が掲げられた回教の聖堂、ダトック・クラマット(Datok Kramat)です。「本日、豚肉を食べた人はこの柵より中には入らないでください」という注意書きはあるものの、中国人もこの前で手を合わせています。さらにそのすぐ隣には、ヒンズー教のガネーシャの像が鎮座しており、周囲にはインド人僧侶たちが集まっているのでした。
それは無宗教の記者にとっても不思議な光景でしたが、人々はみな、ごく自然に3つの宗教の神様に同じように祈りを捧げているのです。
猟師たちが拾った神様の像
やがて人々は海岸を見渡す場所に素朴なお寺を建てて、神様たちを祀りました。ところがそのお寺は火事に遭い、中国の神様だけが残って、他の神様の像などは消失してしまったそうです。
次に建てられたお寺はもっと規模が大きくなり、ヒンズー教のガネーシャ像はバンドンのヒンズー寺院から贈られるなど、他寺院の協力も得られて寺院らしい体裁が整いました。4回の引越しを経て、数年前に新築された現在の建物は中国と台湾の建築家による本格的な寺院で、建設費1,200万ドルを費やしたものです。
各宗教祭で賑わう
3つの宗教が共存しているロヤン寺院の管理事務所は一年中忙しいそうです。なぜなら3つの宗教の主なお祭りを主催するから。回教のハリラヤ・プアサ、ハリラヤ・ハジの時にはハラル・フードを取り寄せてお供えするし、中国正月やトゥア・ペックコンの誕生日には一日がかりのイベントを開催します。つい最近もヒンズー教の祭りがあったばかりです。
しかも寺院にはシンガポール人だけでなく、コーズウェイを渡ってくるマレーシア人、またユニークなお寺の噂を聞いて見学に来る外国人など訪問客は絶えることがありません。そのため24時間営業しており、いつでも参拝客を迎えるのだそうです。
ロヤン寺院は国籍、人種、宗教にかかわらず、誰でも受け入れてくれるうえ、3宗教の神様のご利益がもたらされるという、実にありがたいお寺です。建物は豪華になりましたが、庶民の健康や平穏、幸運を願う気持ちと、その声に耳を傾けてくれる神様たちが見守っていることに変わりはありません。猟師たちの素朴な祈りの原風景が、これからも多くの人々に引き継がれていくのでしょう。