新築のコンドミニアムでは最新設備が備えられる一方、各部屋のサイズがコンパクトになる傾向も。築10年、あるいは20年以上のコンドミニアムを訪れると、部屋がゆったりと広いことに驚かされることもしばしばです。
部屋がコンパクトになってくると、サイズの大きな家具の配置に悩まされることに。特にベッドは床を大きく覆ってしまう構造であるため、部屋をベッドルーム以外の用途に使うことは難しくなります。さらにシンガポールに住む外国人の頭痛の種になっているのが、賃料の高騰。予算に見合う部屋を選んだ結果、部屋数が限られてベッドルームと書斎部屋を別々に確保することが難しかったり、客を迎えるスペースとプライベートスペースを分けることに苦労している家も少なくありません。
手ごろな値段で、スペース節約、
しかもスタイリッシュな家具を
ロンドン出身のマット・レビンさんが2年半前にシンガポールで最初に住んだ部屋も、かなり手狭だったそうです。「パリにも8年住んでいたことがあって、やはりアパートなど部屋が小さいところも多いんです。その頃に見たようなスペース節約型のベッドがないかとシンガポールでも探してみました。やっと見つけたものは2万Sドル。デザインも良かったのですが、そんな金額をベッドに払えるなら、そもそも狭い部屋に住む苦労なんかしてないはず(笑)」。手ごろな値段で、スペースも節約できて、しかもスタイリッシュなものがないだろうか、ないならどこかに頼んで作ってもらえないだろうか、と考えたマットさん。周りに話してみると、「そんなの無理」という声が大半でした。「そう言われると『じゃあ自分がチャレンジしてやる』って思ったんです」。
家具関連の展示会などに足を運んでは、デザイナーや家具メーカーに接触したり、インターネット上でいろんな国や地域から情報を収集したりと約1年かけてリサーチ。その結果、希望にかなう家具をいくつも発見、また、自分達のアイディアを取り込んだ家具を作ってくれるメーカーにもめぐり合うことができました。ビジネスパートナーとともに今年5月に「スペースマン(Spaceman)」を設立、現在マーケットを開拓中です。
また、人の背よりちょっと高めの飾り棚を横にグルリと180度回転させると、ベッドの裏板が現れ、上部からゆっくり開いていくと、ベッドマットが登場します。ベルトが付いているので、掛け布団ごと収納しておくことが可能です。ベッドとして使う間、飾り棚は裏側に行くだけなので、棚に飾ったものを移動する必要はありません。朝起きたら、再びベッドを閉じて180度回転させると、元の飾り棚に。ベッドの開閉には大きな力は要らないので、女性でも楽に扱うことができます。
当初は、シンガポールに居住する外国人やSOHOなどを主な顧客層として見込んでいたそうですが、実際にビジネスを始めてみると購入者の7割はシンガポールの一般家庭。「HDBで4ベッドルーム、5ベッドルームなどの物件で、小さめの部屋で使いたいというお客さんが多かったんです。意外でしたね」。
シンガポールで生まれたばかりのスペースマンですが、インターネットでも商品を販売していて、世界各国へも可能な限り配送する予定。もちろん日本にも配送します。「手ごろな値段で、スペースも節約できて、しかもスタイリッシュな家具があれば、その人の暮らしは劇的に変わるはず。小さな部屋でもよりハッピーに暮らせます。世界中でいろんな人をハッピーにしたいんです」。