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シンガポールの夜空を彩る打ち上げ花火

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よく知られているように、シンガポールでは一般の人が花火や爆竹を取り扱うことは法律で禁じられています。そのため、大規模なイベントでの打ち上げ花火は、シンガポールに住む多くの人々が楽しみにしています。

 

花火が打ち上げられるイベントは、1月〜2月のチャイニーズニューイヤーの時期に開催されるリバー・ホンバオ、8月9日のナショナル・デー・パレード(NDP)、12月31日のマリーナ・ベイ・シンガポール・カウントダウンなど。NDPの数週間前は毎週末、会場であるフロート@マリーナ・ベイでリハーサルが実施され、花火もその度に打ち上げられています。

 

花火を打ち上げる時間はいずれのイベントでも10分から15分ほど。日本各地で開催される花火大会に比べるとかなり短めではありますが、大小さまざまな打ち上げ花火が楽しめます。

 

シンガポールの花火師は軍人?

「1980年代まで、NDPなどのイベントで花火を打ち上げるのは、軍の仕事だったんです」と教えてくれたのは、エフェクト・テクノロジー社(Effects Technologies Pte Ltd)のスティーブン・ンさん。スティーブンさん自身、30代半ばまでシンガポール軍に所属していました。退職後しばらくは製造業で品質管理の仕事に就いていましたが、1990年代以降、花火の打ち上げが民間企業に委託されるようになったことから、軍で身に付けた専門知識を生かして自分も花火の仕事に携わりたい、と考えたそう。1999年に現在の会社を設立、花火や特殊効果のパイロテクニックなどを取り扱う免許を取得しました。

 

現在シンガポールで同様の免許を持つ企業は5社のみ。そのほとんどが、スティーブンさんと同様、シンガポール軍で爆発物に関する専門のトレーニングを受けた人達が立ち上げたものだそうです。

 

シンガポールの花火事情

国土面積が小さいながら人口密度が高いシンガポールでは、住民の安全を確保するために花火の取り扱いについていろいろと厳しく制限が設けられています。

 

まず、打ち上げ花火をはじめ屋外で実施する場合は、1ヵ月以上前に申請して内務大臣の許可を得る必要があります。さらに、警察、民間航空庁、空軍、もちろん会場の地主の許可も得なければなりません。当日の万一の事態に備えて、民間防衛隊、消防署にも予め連絡が必要です。屋内でのコンサートやパーティ、マジックショー、新製品発表会で演出に使用されるパイロテクニックなどでも3週間前に警察の許可を得る必要があります。

 

会場まで花火を運ぶ際にも規定があります。花火を積んだ車の運転が許されるのは、危険物を運搬する車両の運転許可証を保有するドライバーだけです。

 

シンガポールでは花火の製造は禁止されているため、スティーブンさんの会社では中国やアメリカ、ヨーロッパなどから輸入しているとのこと。トレーニングのために、日本やアメリカなど国外の提携先企業へ行くことも多いそうです。

 

さまざまな手続きや調整、準備と膨大な作業もこなさなければならない花火の仕事に10年以上携わってきたスティーブンさんに、この仕事の一番良いところは?と尋ねてみました。「きれいな花火を打ち上げて、大勢の人に喜んでもらえるのが何よりです。毎回これがベストだ、と思いながらやっています。イベントやテーマに合わせて、どの色で、どの大きさの花火を、どのタイミングで何発打ち上げるか、といったことを考えるためにはクリエイティブであることも求められます。楽しいですし、やりがいがありますね。お金を儲けたかったら、もっと違う仕事をした方が良いと思いますが(笑)」。

 

スティーブンさん達は、東南アジア各国や中東など海外でのプロジェクトにも積極的に参加し、ビジネスを拡大するだけでなくレベルアップを図り続けています。1月24日から開催されるリバー・ホンバオで打ち上げられる花火を担当するのも彼ら。「10分間で1,000発以上の花火を打ち上げる予定です。水中花火も使って、ダイナミックで華やかな花火をお見せします。ぜひ見に来て楽しんでください」。