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古くて新しい、競馬の世界へ「Singapore Turf Club」

スクリーンショット 2015-07-02 12.17.25英国植民地時代に始まり、年々進化し続けて、今や最先端の設備を整え、人気の馬や騎手が参戦すると評判の競馬場、シンガポール・ターフ・クラブを訪れました。広大な敷地にはトレーニング・トラックや数多くの厩舎、水泳用のプール、馬専用のクリニックなど立派な設備がありますが、1,200頭もの馬の姿は見当たりません。朝の訓練を終えた馬たちはいったん厩舎に戻って休んでいるということでした。次に案内されたのは観戦席のあるギャラリー。ホテルのように瀟洒な建物の3階に上がると、VIPラウンジがあります。テーブルにあるインターネットで情報をチェックしたり、馬券に番号を記入したり、中にはシャンパンを片手に談笑する女性の姿もありました。

 

パドックからレース・トラックへ   高揚感あふれる競馬観戦

ようやく馬に出会えたのは、屋外のパドックです。茶褐色の馬たちがトラックライダーとともに闊歩する姿が見られました。“競走馬”“サラブレッド”という言葉から、逞しい印象を持っていましたが、目の前の馬たちは、思わず触れてみたくなるような美しさでした。鍛え抜かれたボディーに艶のある毛並、軽やかに動く足、たてがみ。見とれている間に騎手が次々と騎乗して軽くウォーミングアップした後、パドックからいざ出陣。

そしていよいよレースです。記者は初めての競馬で、他のメディアとともにゴール近くのトラックに入ることを許可されて、緊張しながらカメラを構えました。合図の音とともに一斉に走り出した10頭の馬たち。その豪快な姿がスクリーンに流れています。蹄の音は大波が近づいてくるようにしだいに高鳴り、まもなく手前の直線コースの彼方に、疾走する馬たちの第一陣が見えてきました。カメラをズームインすると、馬の背中で手綱を操る騎手が、上下に躍動する姿も見えました。背後のギャラリーからはオオオーッという歓声が響き、蹄の音と重なってトラックを揺らすように感じたかと思ったらもう、目の前を次々と馬たちが走り抜け、ゴールイン。スタートからゴールまでわずか2分ちょっと。あっという間のレースでした。

 

 

150周年を祝ったあとクランジへ    伝統あるターフ・クラブはグローバルに発展

シンガポール・ターフ・クラブは1842年、シンガポール・スポーティング・クラブとして創設されました。翌年、初レースが行われています。1896年にはマラヤン・レーシング・アソシエーションの前身が発足し、今もその協会によってシンガポールとマレーシアの競馬が管理されています。シンガポール・ターフ・クラブとなったのは1924年で、競馬が一般公開されたのは1960年でした。1972年にはエリザベス2世のご観戦を記念してクィーン・エリザベスⅡカップも行われています。1992年に150周年記念を祝い、1999年に現在のクランジに移動して最新の設備を誇るクラブが完成。レース場には全天候型のポリトラックもあり、巨大スクリーンは2007年新設当時、世界一を誇っていました。馬たちはオセアニアや日本から輸入していますが、地元で育った馬ロケットマンが2011年には国際レースで優勝、という快挙も成し遂げています。

世界中から集まる馬と騎手たち、調教師、トラックライダー、そしてレフリーなど関係者も国際色豊か。日本人が運営する厩舎もありますし、日本人女性トラックライダーも活躍中です。

 

 

レースが行われるのは毎週金曜夜と日曜午後。ドレスコードはありますが、1階のオープンエア席は気楽な雰囲気で、入場料はS$5から。賭け方は日本の競馬と似ていて、単勝式(S$5〜)、複勝式(S$2〜)などがあります。さらにターフ・クラブの担当者によると、馬が好きな方は馬主になるのも夢ではないそうです。共同保有することができますし、条件も日本よりゆるやかだとか。競馬にはいろいろな楽しみ方があるのです。スポーツ・オブ・キングスと呼ばれる所以かもしれません。