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熱帯綺羅

2013年9月16日

シンガポールに残る最後のカンポンを訪ねて

 

今に生きるカンポン精神に触れる

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近所に暮らす人々が声かけあって助け合う「カンポン精神」の慣習をこよなく愛するスンさん。カンポンに暮らして58年間、一度もここを離れたいと思ったことはなく、馴染みのカラフルな花々、動物たちに囲まれてのんびり暮らせる場所はここ以外にないしね、と笑います。近年薄れゆくカンポン付き合いと裏腹に、観光ガイドに連れられた海外からの観光客、ドキュメンタリー映画やテレビ番組を見てやってくるシンガポール人の若者などが多数訪れるようになりました。「父がこの土地を残してくれたお陰で、いろんな国の人たちに出会うことができてうれしい」と、カンポンの語り部の役もスンさんが担っています。
一方で、排水が悪く豪雨が続くと洪水が起こる地域でもあり、村ごと浸水することが過去に何度もありました。2006年に政府が1,000万Sドルをかけて排水システムを築く策を検討しましたが、当時28世帯が暮らすのみの地域に費用対効果が悪いと取り下げられたことも。また最小限の下水施設など衛生面の問題もあり、立ち遅れている部分があるのも否めません。
スンさんの家の前に、大きなサガの木がありました。「この実は『相思豆』といって、100個集めて好きな人にあげると恋の願いが叶うのよ、持って帰りなさい」と、袋一杯のサガの実をお土産に頂くことに。この日、カンポンを離れてHDBで暮らす9歳の甥っ子がスンさんを訪ねてきており、少し照れながら「また来てね」と言いました。懐かしく温かい気持ちになれるカンポン、その精神と共に長くロロン・ブアンコックにあり続けてくれることを願うばかりです。

 

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Lorong Buang Kok singapore

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.242(2013年09月16日発行)」に掲載されたものです。
文= 桑島千春
写真=Eugene Chan

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