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パイロットの世界をリアルに体験「Flight Experience Singapore」

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何百人もの乗客を乗せたジェット旅客機を操縦して大空を飛んでみたい――そんな夢を本物の旅客機のコックピットそっくりのフライト・シミュレーターで誰でもかなえられる場所が、フライト・エクスペリエンス・シンガポール。元々はニュージーランドのクライストチャーチで始まったサービスです。
運営しているのは、英国人のキャストン夫妻。夫のマイケルさんは英国航空に30年、シンガポール航空に10年勤務した元パイロット。妻のジョアンナさんも英国航空の元客室乗務員で、現在はシンガポール航空で乗務員向け研修の教官も務めています。2008年にマイケルさんがパイロットを引退し、フライト・エクスペリエンス・シンガポールの運営を夫妻で手がけることになりました。「アメリカ同時多発テロ以降、コックピットには関係者以外一切入れなくなりました。以前は飛行中にお客様が来て、パイロットと会話することもよくあったんです。一般の人に、せめてシミュレーターで体験してもらえたら、と考えて引き受けました」。

 

 

操縦桿を操る難しさや面白さを体験

フライト・エクスペリエンスに設置されているシミュレーターは、小型ジェット旅客機ボーイング737をベースにしたもの。1967年から生産され、2013年には通算7,500機を超えたベストセラー機です。パイロット養成訓練でも使用されているシミュレーターで、実機と同じ装備のコックピットが中にすっぽり収まっています。内部には、本物と同じように計器やスイッチがずらり。左側の機長席に座れば、気分はすっかりジェット旅客機のパイロットです。訓練を受けたことがない人でももちろん心配無用。インストラクターが隣の副操縦士席に座って丁寧に教えてくれます。
ここでは、世界各国の空港での離発着をシミュレーション可能。自分で好きな空港を選べ、時間帯や天候などの条件も設定できて、それに合わせて窓の外の景色も変化します。もっとも、フライトのシミュレーション中は水平儀や高度計を見ながら機体のバランスを取って、高度を維持するだけでもひと苦労。初心者は外の景色どころではなくなります。インストラクターの指示通りに操縦桿を前後左右に少しずつ動かし、エンジンの推進力を制御するストラトレバーを押したり引いたり、天井に設置されたシートベルト着用サイン点灯のスイッチを押したり。そうこうしているうちに、いつの間にか高度が急激に下って危険な状態に……数十分試してみるだけでも、パイロットという仕事の難しさ、おもしろさを味わえます。

 

未来のパイロット達を支援

フライト・エクスペリエンスでインストラクターを務めているのは、ほとんどが未来のパイロット達。パイロット養成学校での訓練を終え、各航空会社の採用試験に挑戦しながら働いています。開業して間もない頃は「今日はみんな面接に出かけてインストラクターがいない!」と慌てたことも。営業開始前の早朝に、マイケルさんが面接の練習相手をすることも多いそうです。
フライト・エクスペリエンスのユニークな取り組みのひとつが飛行機恐怖症克服プログラム。「心理学者を招いて話を聞いたり、安全な飛行のためにパイロットがどのように飛行機を制御しているかを話したりします。なぜあんな巨大な金属の塊が1万メートルの上空を飛べるのか、安全に着陸するために何が行われているかを理解すると、恐怖心が和らぐ人も多いのです。飛行機が怖くて困っている方にはぜひ一度参加してみて頂きたいですね」。
フライト・エクスペリエンスには、地元の小学校や幼稚園の子供達もしばしば見学に訪れています。ここでコックピットからの眺めを疑似体験した子供達から未来のパイロットが誕生することを、キャストン夫妻は楽しみにしています。