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世界の安全と調和の願いを奏でる、シンガポール警察音楽隊

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シンガポール警察音楽隊はシンガポール警察の組織の一部として1925年に設立されました。来年で90周年を迎える同隊は、国内で最も歴史のある楽団のひとつとしてシンガポール国内での活動に限らず、世界中にその活躍の場を広げています。

 

民族色豊かな総勢75名

 

発足当初は33名のマーチングバンドとして活動を開始したシンガポール警察音楽隊は、現在は総勢75名体制。チョア・チュー・カンにあるホーム・チーム・アカデミーのスタジオで日々練習に励んでいます。同隊はシンガポール警察音楽隊(Singapore Police Force Band)と、管打楽器演奏を行う女性警官からなるWomen Police Pipes & Drum(以下WPPD)、同じく管打楽器演奏を行うグルカ兵のGrukha Contingent Pipes & Drum(以下GCPD)の3つの隊で構成されています。
真っ先に目を引くのが、赤いチェックのキルト衣装に身を包んだWPPD。英植民地時代の影響を色濃く受け、またロンドン市警にルーツを持つシンガポール警察ならではの出で立ちで、同音楽隊の演奏に華を添えています。また、グルカ兵によるGCPDはネパールに駐屯する兵士で、1955年に結成されました。グルカ兵とは、1949年にインドで発足したイギリス軍傭兵で、一般的にはグルカ族をはじめとするネパール人兵士を指しますが、シンガポール警察組織もグルカ兵を抱えています。シンガポール国内でも大統領官邸イスタナや重要な国際会議で警備にあたるつば広の帽子に精悍な顔立ちの彼らを見かけた方もいるでしょう。20世紀最強の軍隊と称されたグルカ兵による演奏は“力強い”の一言で、人々を魅了して止みません。

 

日本の警視庁音楽隊との親交

 

シンガポール警察音楽隊といえば、独立記念日に繰り広げられる演奏を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、同隊は国内の様々なイベントで演奏するにとどまらず、シンガポールの特色である多民族・多文化のメンバーが集まって優れた演奏を披露するバンドとして海外でも広く活躍しています。シンガポールは日本の交番制度を導入していることもあり、特に日本の警視庁とは深い繋がりがあります。
今では交番システムを導入したシンガポール警察が非常に優れたモデルケースとなっていることを踏まえ、2011年よりASEAN諸国からの参加者を招いて、警視庁の職員がシンガポールで講演や研修を行うまでになりました。

 

 

今年10月初旬、マリーナ地区にあるエスプラネードにおいて『第19回世界のお巡りさんコンサートinシンガポール』が開催されました。シンガポール警察音楽隊は開催国として、日本の警視庁音楽隊、ニューヨーク市警音楽隊と共に素晴らしい演奏を繰り広げました。シンガポール警察音楽隊が同イベントに参加するのは今回で5回目。音楽を介して一緒に演奏することで友情を築き、国際化する犯罪の捜査などで連携できる関係作りがイベントの狙いのひとつといい、同じ舞台での3ヵ国による合同演奏はそれを体現したものとなりました。
シンガポール警察音楽隊長、アムーリ・ビン・アミン警視は「このイベントは、音楽という世界の共通語を通じて、安全と調和を拡げる土台になっている」と警察同士の相互信頼度が高まったことを実感したそうです。

 

 

警察というと「厳格」で「近寄りがたい」という印象が先行しますが、警察音楽隊は音楽を介したコミュニケーションで、市民により親しみを持ってもらいながら交流を深める大きな役割を担っているといいます。正確で調和の取れた音楽は、地域やコミュニティ、そして国家を守るために従事する警察が理想とする精神そのものといえるかもしれません。