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資格・スキルを活かす就職 [日本語教師編]

外国語としての日本語を教える

日本語を母語としない人たちに、日本語を教える日本語教師。シンガポールでは、日本語学校や大学、ポリテクニックなどで日本人の日本語教師が活躍しています。日本国内および海外でも活躍のチャンスがあるこの職業に就くには、どのような資格が必要なのでしょうか。        協力:山本 美里さん(日本語学校勤務)

難関の検定試験 養成講座受講の道も

日本語教師となるには、教員免許のような国家資格はありません。しかし、採用の際には一般に次のような応募条件が求められます。
・日本語教育能力検定試験合格
・日本語教師養成講座420時間コース 修了
・大学で日本語教育を専攻および副専攻
シンガポールの日本語学校で日本語教師としての就職をめざす場合は、これらのうちのいずれか1つを満たしていれば応募はできることが多いようです。大学などでは日本語教育の学位を求められるケースもあります。日本語教育能力検定試験は、公益財団法人日本国際教育支援協会が主催する日本語教員をめざして学習している人や、日本語教育に携わっている人を対象にした基礎的知識・能力を検定することを目的とした試験で、毎年、日本の7都市(2016年)で行われます。受験資格に特に制限はありませんが、合格率は約20%と難関。独学で受験する人もいますが、多いのは日本語教師養成講座420時間コースを修了してから受験するケース。養成講座420時間コースは文化庁の指針に沿った内容となっており、通学や通信教育でも学べます。中には3ヵ月ほど集中して学んで修了をめざすコースを設置している学校もあります。

コミュニケーション能力が問われる

シンガポールで日本語を学ぶ人は、日本文化・サブカルチャーに興味がある人や、日本企業で働いていて同僚や顧客が日本人という人など。日本が好きで、よく旅行に行くからという理由で学ぶ人もいます。日本語教師として日本語、日本文化の知識はもちろん必要ですが、シンガポール人だけでなくいろいろな国の学生がいますので、コミュニケーション能力が大切です。英語力は高い方が便利な場合もありますが、日本語のみを使う直接法で行われることが多い場合は、英語力の有無はそれほど問題ではありません。

シンガポール就職体験談

大学で日本語教育を専攻 日本語教育能力検定試験に合格

現在、シンガポールの大学とポリテクニックで非常勤の日本語教師をしています。大学では1クラス90分の授業を1週間に計4コマ担当しています。1クラス18名です。ポリテクニックでは1クラス2時間の授業を1週間に3コマ担当しています。こちらは1クラス25名。どちらも初級のクラスです。教授方法は日本語だけを用いる直接法ではなく、学生に英語で説明などを行う間接法で行っています。
私は大阪外国語大学の日本語専攻で日本語教育を中心に学び、大阪大学大学院の言語文化研究科言語社会専攻日本語・日本文化実践コース(当時)に進学しました。大学3年次に休学してイギリスの高校で日本語教師アシスタントを経験して帰国後、6ヵ月ほど授業で学ぶ以外に参考書などで勉強し、日本語教育能力検定試験に合格しました。現在、日本語教師の求人の多くは大学で日本語教育を主専攻・副専攻、420時間の養成講座修了、日本語教育能力検定試験合格のどれかを満たしていることが応募資格となっています。私は応募条件をより多くクリアした方がいいと思い検定試験を受験、合格することができました。大学で学んだことの復習に加え、大学でカバーできない分野を学ぶ機会ともなり挑戦してよかったと思います。

 

やりがいとジレンマが同居する日本語教師
大学院時代には提携があるシンガポールのポリテクニックで約1年半常勤講師として勤務したことがあります。その後日本に戻り、シンガポールで結婚し、こちらに住むようになってからオンラインの教師募集の案内を見て現職に応募しました。
日本語教師としてやりがいを感じるのは、学生が日本語で自分の言いたいことを言えた時、また日本人とコミュニケーションが取れて嬉しそうな顔をしているのを見た時です。一方で、教室の日本語と外の日本語が違うと学生が(時に教師も)ジレンマを感じることがあります。漫画を読めるようになりたいと日本語を学び始めても、教科書と漫画の言葉遣いには大きな差があり、いつになったら読めるのか、と思っている学生もいるかもしれません。母語話者が無意識に使い分けている、似た用法がある助詞や表現などの違いをどのように簡潔に整理して伝えれば正しく使えるようになるか、ということにはいつも頭を悩ませています。      天野 景子さん   日本語教師