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Employer's Voice

2009年11月2日

日本企業に適したグローバル人材のスペックについて(2)

三菱商事(株) HRDセンターアジア分室長 松田豊弘 業種:総合商社

前回、日本企業の海外オフィスでのRetention(確保)の問題に端を発し、(1)雇用する側の日本人駐在員の共通のHRD(Human Resources Development)課題と(2)雇用される側、すなわち採用候補者のCM(Career Management)意識に注目すべきであると申し上げた。まず第一に、雇用者であるわれわれ日本企業側のパフォーマンス&キャリア・マネジメント・スキルの弱さが原因のひとつでありこれを改善してゆくことが優秀スタッフの確保のインフラとなる。第二に、雇われる側の「HRD意識」と「人生観」に注目し、いわゆる「日本的要素」を持った異文化適性のある「バイリンガル」人材を敢えて採用すべきである。本稿では、前回ご覧頂いた「優秀人材」を見る視点についてご説明させていただく。下掲の図表にご注目願いたい。

 

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①の左と右は、それぞれ上述の「HRD意識」と「人生観」に関わるものである。すなわち、優秀スタッフは、国籍を問わず、3~5年後の自分自身のプロ人材(候補者)としてのイメージを常に模索しており、「キャリア志向」が強い。更に、優秀人材は常に自分を磨いているので、「自己開発スキル」が高い。従って、これらは中長期的な人材開発のインフラとなる重要な資質であり、これを見抜くことが必須となる。②は、右手に「ビジネススキル」、左手に「HRDスキル」というようにバランスが取れてなければならない点を強調したものであるが、日本企業の駐在員およびNSは左手が特に弱い。経験則とはいえ、これは事実。一方、若いうちから「被考課者」としての自分自身を見つめる癖をつけることでHRDスキルの高いマネジャーを輩出しうることが分かっている。③は「ミッション(使命)」である。ミッションが明確にされない海外赴任が過去にいかに多かったことか。それが故に、前任駐在員のやり方を踏襲するだけで貴重な数年間を終え、残ったNSは真のマネジャーとなれないままで代替わりし続けるケースが多かったものと思われる。「組織ミッション」と「個人ミッション」の相関関係の明示はグローバル企業のABCである。④は当該組織におけるHRシステムの理解である。「職務評価(Job Evaluation)」とグレード制度に基づく各グレードに要求される「スキル」と「コンピタンシー(職務遂行能力)」の理解は、優秀スタッフの「動機(Motivation)」の源泉となる「適材適所適時(Job Matching)」の骨格を構成する必須要素といえる。

 

紙面が尽きてきたが、最後の⑤は、専門家を目指すための「職種別のスキル」と専門性の観点からの職務遂行能力についての理解である。上述は、国籍を問わず適用されるものであると筆者は信ずるがいかがであろうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.156(2009年11月02日発行)」に掲載されたものです。

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