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Employer's Voice

2011年12月5日

現地スタッフと駐在員が共に成長出来る日系企業を目指して

Yamato Payment Service (S) Pte. Ltd. マネージングダイレクター 大内 一寿 業種:サービス業

シンガポールへ赴任して3年目になり、「シンガポール新入生」とはもはや言えない時期になりました。着任後の人材育成に関することについて、これまでに私自身、そして現地スタッフの成長のためにやってきたことを振り返ってみたいと思います。日本で実践してきたこととの違いや新たな発見、シンガポールでの特徴を活かす方法などを自分なりに考えてみました。

(1)私自身・現地スタッフの成長のために

①言葉の壁の克服

海外勤務が初めての私にとって、現地スタッフとのコミュニケーションは当初はもっぱら日本語が理解できる社員を介した方法に頼っていました。しかし赴任後6ヵ月程度のところで、コミュニケーションが十分に出来ない焦りと「まず業務を遂行しなくては」というもう一つの優先課題との間で葛藤が続きました。そのうちお客様との会話で誤解が生じてしまったことで、結果的にビジネスが思うように進まないアクシデントが発生するようになり、「業務を遂行する」ことのストレスも増えてしまいました。そこで、まず英語で必要十分なコミュニケーションが取れるようになることが必須と考え、自己啓発を始めました。その結果、採用時の条件を拡げることができるようになりました。

②人材育成における、お互いの考え方の克服

日本での仕事のやり方や考え方を現地スタッフへ伝えていくことは非常に困難を伴いました。日本で行ってきたサービスをシンガポールで展開していく上で、どうしても譲れない部分と現地に適応していくべき部分を見極めなくてはなりません。例えば、電話応対。「全員が会社名と自分の名前と、時間に合わせた挨拶をしよう」としても、これまでの仕事の経験において不要なことであれば「ここはシンガポールなのだから、日本と全く同じことをしなくても」という意見と対立することになります。そこで「日本ではこうやっていたのだから」と言うだけでは克服にはならず、違和感だけが残りますが、サービス業に従事する社員として「電話を取った全ての人が会社の代表としてお客様と接するのだから、きちんとした挨拶をする」という会社の考え方を理解してもらえるように伝え続けること、何よりも指導する我々が実践することで「譲れない部分」、すなわちサービス業として守り続けたいと考えている部分を共有していくことが出来ると考えています。日本から持ち込んだ色々なやり方を、現地に適応するために必要に応じて「変化させていく」ことは、ある意味「伝えていく」ことよりも大変なことなのですが、現地スタッフと共に自分たちの会社を成長させていくという過程では避けられないことだと思います。

(2)採用における日本での経験との違い

①「プロ意識」と各人のパーソナリティの活用

シンガポールで社員を採用する際に応募者の履歴書を見ていると、同業種の会社に従事するよりも、同職種の業務に従事してきた応募者が多いことに気付きました。例えば、営業職希望の応募者は職歴も営業職が多く、人事職、経理職などについても同じようなことが言えました。日本で、特に当社グループの社員は「スペシャリスト(専門職)」よりも「ゼネラリスト(多機能職)」を好む傾向があり、色んな業務を習得することで会社全体の業務の遂行をスムーズにしていこうという考えがありました。シンガポールにおいては、「スペシャリスト」の要素を持った社員が多いことから、彼らのこれまでの職歴を活かす採用と業務指示をしていくことがより各業務の効率化につながるのではと思います。また、応募者の職歴のみではなく、人材会社から応募者の性格を客観的に評価した材料などを提供してもらえることも採用時の面接の補足になりました。

②人材の入れ替わりの速さを活かせるか

人の入れ替わりが多いのもシンガポールの特徴の一つですが、①の特徴が他の会社とのコミュニケーションを潤滑化する効果もあります。かつて勤務した会社との関係が良ければ、お互いに助け合うようなことも出来ているようです。

(3)これからの社員の成長のために

日本のサービスを海外で展開していく当社の目標は、サービスとして「譲れない部分」の浸透と「現地への適応」という一部相反する要素を含んでいます。現地社員に任せる部分を増やしていくことで責任と達成感を共有することが出来るようになると考え、ある程度長期的な眼でこれからも諦めることなくこの2つの課題を克服していきたいと思います。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.202(2011年12月05日発行)」に掲載されたものです。

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