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社説「島伝い」

2018年3月26日

実現までのスピード感

 3月20日以降に発行されたエンプロイメント・パス(EP)やSパスのカード裏面には、QRコードが印字されるようになりました。最近従業員の就労ビザの申請・更新手続きを取った企業や、労働許可証(ワークパーミット)保持者を雇用、あるいは契約している企業の方などは既にご存知でしょうが、このQRコードをスマートフォンのアプリ「SGWorkPass」で読み取ると、各就労ビザに関する情報を閲覧することができます。

 

 このアプリは、人材開発省(MOM)より昨年9月にリリースされました。当時は、港湾や建設現場で働く外国人労働者向けのワークパーミットのカード裏面にのみQRコードが入っていてこのアプリを利用できましたが、今年1月に外国人メイドを除く全業種のワークパーミットのカード、さらに3月からはEP、Sパス、ディペンデント・パス(DP)、長期訪問ビザ(LTVP)などMOMが外国人に発行する全てのカードに入れられるようになりました。

 

 例えば、ワークパーミットの有効期限前に雇用契約が何らかの理由で既に解除されて無効になっていた場合、従来はパソコンからMOMのサイトへアクセスしたり、あるいは電話で問い合わせる、といった方法でしか確認できませんでした。外国人労働者を多数受け入れている作業現場などでパソコンの利用環境がない場合、時間も手間もかかり過ぎてしまいます。しかし、シンガポールではほぼ誰もが常に持ち歩いているスマートフォンが利用できるようになり、ワークパーミット保持者と契約する企業や作業現場のオーナーなどは、有効期限や申請日、発行日などの最新情報を瞬時に確認できます。また、パス保有者自身もスマートフォンを使っていつでも自分の就労ビザに関する最新情報を見ることができます。

 

 QRコードとSGWorkPassアプリで外国人が保有するパスの有効性を即時に確認できるこの仕組みは、昨年8月の建国記念日大会の演説などにおいてリー・シェンロン首相が語っていた「スマート国家建設」の実現例の一つでしょう。もちろん、システムの開発などの準備はずっと以前から行われていたでしょうが、演説から1ヵ月足らずでこのようなシステムの運用が開始され、さらにその半年後にはほぼすべてのパスが対象になるというスピード感はあざやかであり、大きなインパクトを与えます。

 

 3月の予算審議の中で外国人雇用の基準が一層厳しくなる方針や、雇用法改正などが発表され、シンガポールでの外国人雇用をめぐる環境は変化し続けています。この国の変化の速さに、私達もまたしっかり対応していかなければなりません。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.332(2018年4月1日発行)」に掲載されたものです。

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